彷魔が刻 ~錯綜する二つの人格 ストレスメーター管理がプレイヤーの道を照らす

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©1988 TOHO CINEFILE-SOFT LIBRALY

GAME DESIGNED BY ADVANCE COMMUNICATION COMPANY

 

 

基本情報

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商品情報 彷魔が刻(ジーキル博士の彷魔が刻)
対応機種 ファミリーコンピュータ
販売 東宝
開発 アドバンスコミュニケーションカンパニー
発売日 1988年4月8日

 

作品概要

「彷魔が刻」(「ジーキル博士の彷魔が刻」)(-A Strange Case of Dr.Jekyll-)は1988年東宝からリリースされたファミリーコンピュータ用ゲーム作品。イギリスの作家ロバート・ルイス・スティーヴンソンの小説作品「ジーキル博士とハイド氏」(「The Strange Case of Dr.Jekyll and Mr.Hyde」)を基にしたサイドビューのアクションゲームだ。

原作となる作品が存在するゲームではあるが劇中にモノローグや会話シーンといったものは一切なく、純然たるアクションゲームに特化した内容となっている。特に原作への知識はなくともプレイする上では何ら支障はないのでその点については安心して欲しい。

 

作品タイトルについては明確な出所は不明だが、夕刻、黄昏時を意味する「逢魔時(おうまどき)」から本作タイトル用に造られた造語と思われる。なお、字面がよく似たPlayStation用サウンドノベルソフト「逢魔が時」シリーズとは本作は一切関係ないので、混同しないように注意。

 

 

ストーリー

 

(※説明書より要約)

 

人間の善と悪の心を分離する薬品を発明し、自らをその薬品の実験台にした医学博士ヘンリー・ジーキル。

研究をつづけた結果、次第に善悪のコントロールが出来なくなったその身体で無意識に残虐行為を繰り返し、破滅の道を歩もうとする彼の運命は―?

 

 

システム

 

ライフ/ストレスメーター

本作では一人の人物に宿るジーキル博士とハイド氏、二つの人格を切り替えながら進行していくシステムが取られており、画面上部に表示される2つのゲージはそれぞれ上段がライフメーター、下段がストレスメーターを表している。

ライフメーターはジーキル博士、もしくはハイド氏が敵から直接的な攻撃を受けることで減少する。対してストレスメーターはそれぞれのモード毎にその役割は少しだけ異なり、それぞれ特定の条件下で変動する。

これについては後述の両モード紹介の項目内で詳しく触れていくが、このストレスメーターの上手な管理が本作を攻略する上で重要となってくるので、プレイ時には常に気を配っておきたい。

 

COINは文字通り所持金となるコインの所有数を表している。コインの獲得方法に関しても別項にて後述。

 

操作方法

 

本作ではジーキル博士を操作するパート(ジーキル博士モード)とハイド氏を操作するパート(ハイド氏モード)でそれぞれ異なる操作仕様となっている。

(ジーキル博士モード)

 十字キー 左右:左右移動、 下:屈み動作、上:建物に入る(扉のある場所限定)
Aボタン ジャンプ
Bボタン ステッキ攻撃

(ハイド氏モード)

十字キー 左右:左右移動
Aボタン ジャンプ
Bボタン サイコ・ウェーブ攻撃

 

ジーキル博士モード

 

ジーキル博士の主なアクションは移動、屈み動作、ジャンプ、ステッキによる攻撃の4種類。

下方向にキーを入力することで繰り出せる屈み動作中はその場から動くことができないが、低姿勢になることでパチンコなどの特定の攻撃を回避することができる。

 

 

Aボタンではジャンプを繰り出せる。

ジーキル博士のジャンプの高度はあまり高くはないが、絶え間なく突進してくる敵を身体一つで躱す唯一の手段となるため、彼のアクションの中では最も重要度が高い。

 

Bボタンでジーキル博士唯一の攻撃アクションであるステッキを繰り出せる。

ただ、ジーキル博士モードで登場する攻撃可能な全ての敵キャラクターに対して、このステッキ攻撃を命中させると例外なくストレスメーターがH(ハイド)側へと偏っていってしまう。

 

なお、作中においてステッキで敵を倒す事は一切できない。

ステッキについてはストレスメーターの調整以外の用途では基本的に使用自体を封印するくらいに思ってもいいだろう。

 

ゲームルール(ジーキル博士モード)

ジーキル博士モードは本作のメインモードとも言えるパートで、目的は婚約者のミリセントとの結婚式を挙げるべく、キンズウェイ街の教会を目指すことだ。

プレイヤーはジーキル博士を操作して、トルフォード街から始まる全6ステージを道中出没する市民や動物の妨害を回避しながら右方向へと進んでいく。

 

 

基本的に”道中で動きを見せるキャラクターは自身を除けば全て敵”と思ってまず問題ないが、この内全ステージを通して特に注意を払いたいのが爆弾を設置する”謎の爆弾魔”だ。

この爆弾魔はジーキル博士とすれ違う程度の距離まで近づくと、爆弾を設置して一目散に立ち去っていく。

爆弾は一定時間後に爆発。近くに通行人や猫がいた場合は彼らを驚かせ、暴れ出させるといった効果もあわせ持っている。

 

設置された爆弾は確認したらすぐに一定の距離を取るか、近くに扉がある場合に上キーを押して扉を開けて中に入ることで凌ぐことができる。

ジーキル博士は扉を開けて建物に入った後、わずか数秒で外に出ようとしてしまう習性があるので、この方法で爆弾を回避したい場合は爆発の頃合いを見定めてから扉を開けるのが良いだろう。

 

 

運悪く、爆弾回避に失敗した場合はノックバック動作と共に、連続ヒットしながらダメージを受けて大きく後方へと吹き飛ばされてしまう。

被弾によるメーターの減少率次第ではハイド氏モード(後述)へと直行したり、そのままLIFEを全て失ってゲームオーバー、といったパターンも少なくない。

 

おまけに爆弾魔は全ステージを通して執拗に登場する上に、ゲーム後半に入ると設置から爆発までの間隔が異常に速くなり、他の妨害要員とのコンビネーションによっては回避自体が困難となってくる。

上記のような理由から爆弾魔は全編を通して、取り分け要注意な対象となっている。彼が設置していく爆弾を毎回どうやり過ごすかが本作攻略の鍵と言っても過言ではないほどだ。

 

 

また、ステージ1、2ではただ素通りするだけで単なる背景と変わらなかった通行人も、中盤以降からジーキル博士との距離が近くなると急にこちらに向かって走り出して来るといった妨害を行うようになる。接触すれば勿論ライフやストレスが減少する。

一方で、彼らを相手にジーキル博士が持ちうる対抗手段は終始突進や攻撃をかわすだけといった具合で、操作する側のストレスゲージも溜まる勢いの厳しい仕様だ。

特に後半にもなると各敵キャラの出現パターン次第では、ジャンプ一つではどうにもこうにも避けようがない状況にも陥り易い。終盤に至っては躱すだけで目一杯になり、画面が一向に右方向へと進められないようなこともしばしばだ。

 

そんなジーキル博士の過酷な道中で唯一のお助け要素となるのが、特定の建物の中から手を振る姿で現れるミセス・レイチェル。

彼女が手を振る建物へと扉を開けて中へ入り、共に一時を過ごすことで特別な効果が発生。運が良ければLIFEとMETERが全快する上に一定数のCOINを獲得、運が悪いとその逆の効果が発生する。

お助け要素とは記載したが効果としては博打性の高い側面があるため、もしも窮地で彼女の姿を確認した際に利用するかどうかはプレイヤーの判断次第だ。

 

ハイド氏モード

ジーキル博士モード進行中、攻撃や妨害を受け続けて、前述のストレスメーター(METER)が全てHの方へと偏ってしまった時点で、ジーキル博士が頭を押さえてうずくまり画面が薄暗く暗転。直後にもう一つの人格ハイド氏が目覚めてしまう。

この時点でゲームはハイド氏を操作するパートのハイド氏モードへと突入する。

 

ハイド氏のアクションは大きく分けて左右移動、ジャンプ、パンチ、サイコ・ウェーブ攻撃の4種類。ジーキル博士と違って屈み動作は出来ないので要注意。

Aボタンでジャンプ動作を繰り出せる。ジーキル博士のふんわりした挙動のジャンプに比べて跳躍力が大幅に増しており、空中制御に関してもかなり小回りが利く印象だ。

 

Bボタンでパンチ攻撃を、上方向にキーを入力したままBボタンを押すことでサイコ・ウェーブ攻撃をそれぞれ繰り出せる。一応は飛び道具攻撃となっており、ジキルモードに比べるとある程度の頼もしさもある。

 

パンチの方はハイド氏の体躯を思えばそれなりの判定をもった近接攻撃という印象で、彼の攻撃の主力はどちらかと言えばサイコ・ウェーブの方となる。

サイコ・ウェーブは飛び道具タイプの攻撃だがその軌道はブーメランを彷彿とさせ、発射時はハイド氏の正面斜め下方向へと放たれ画面左端の方まで旋回しながら戻ってくる。

画面上に1発しか出せないのは一見心細く思えるが、上記のような変則的な軌道を取るため見た目以上に命中率も攻撃性能も高い頼れるアクションだ。

 

ゲームルール(ハイド氏モード)

ハイド氏パートではスクロール方向が右から左方向へと逆転(リバース・スクロール)し、同時に強制スクロール方式に切り替わる。

プレイヤーはハイド氏を操作して、パンチやサイコ・ウェーブで現れる怪物を撃退することでH側に傾いたMETERを少しずつJの方向へと戻していくのが目的となる。

 

怪物を倒す内、時々「C」と表記されたアイテムが出現することがあるが、これはコインを獲得できるアイテムだ。コインはジーキル博士モードでは随所で入用となってくるのでここで可能な限り回収しておきたい。

コインアイテムはサイコ・ウェーブを当てることでも回収できるので、併せて覚えておこう。

 

 

ハイド氏モードで怪物達を一定数倒し、ストレスメーターをJの方に近づけてジーキル博士モードへと戻ることに成功すればLIFEゲージを大幅に回復することができる。

一方、ハイド氏モード進行中にLIFEが0になってしまうとそのままゲームオーバーとなってしまうので、上手く操作してジーキル博士の人格へと立ち戻ろう。

 

ジーキル博士の姿の時は表に出ることはない悪の心を糧として、その強力無比な能力で突き進むハイド氏。しかし、彼が歩んでいるのは破滅への道だ。

ハイド氏モードだけを延々とプレイしていると、やがて辿り着くのは…。

 

プレイ後の感想

「彷魔が刻」は全6ステージ構成と決して長いボリュームではないが、全面制覇を目指すプレイはハッキリ言うと苦行に近い。その最たる要因はメインであるジーキル博士モードの”ひたすら敵を躱すだけ”という終始受け身なプレイスタイルを強要されるゲームバランスと、それを前提にした上での後半の高難易度化の二点に集約されている。

二面性を題材にジーキルとハイド各人格別に2タイプのゲームモードを搭載している点は本作ならではの斬新な試みだが、一つのアクションゲーム作品として見るとゲームバランス面では色々と難ありな仕上がりといった印象だ。

 

一方でグラフィック面においては、アンティーク然とした西洋の雰囲気が少ない発色数の中でよく表現されており一見の価値がある。渋味を帯び、均整のとれた本作のドットデザインには要注目。

 

ここまで綴ってきた通りかなりクセの強い作品ではあるが、本稿を読んだ上でもしも本作に興味が湧いた方は、不自由極まりない操作仕様に執拗な敵の出現パターンが相俟った極悪な難易度― これらの点を踏まえた上で臨んでみて欲しい。

 

評価

 

個人的スコア(10点満点中) 3.5

 

良い点

  • イギリスの景観を表現したアンティークなタッチ且つ上品なグラフィック
  • ファミリーコンピュータタイトル屈指のアブノーマルな魅力をもつ世界観
  • ジーキル博士とハイド氏でそれぞれ全く異なるアクションパートが展開

 

惜しい点

  • メイン操作キャラとなるジーキル博士の移動速度が極端に遅い
  • 上記も理由となって、作中出現頻度の高い爆弾魔の攻撃を回避するタイミングが異様にシビア。
  • ゲーム後半では他の妨害キャラと同時に出現する事が多く、中々前進できずにストレスが溜まる
  • ハイドモードを突破して、ジーキルモードに戻った際の見返りが少ない

 

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