モスメン 1966(Switch) -プレイ後の感想と作品解説【レビュー】

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©2021 Chorus Worldwide Ltd. All rights reserved. ©2021 LCB Game Studios

 

 

基本情報

 

タイトル モスメン 1966(Mothmen 1966)
対応機種 Steam/Nintendo Switch/PS4&5/Xbox ONE
販売 コーラスワールドワイド
開発 LCB Game Studio
発売日 2022年7月14日(全機種)
対応言語 日本語,フランス語,ドイツ語,スペイン語,英語
備考 IARCレーティング:16+(激しい暴力,激しい言葉づかい)
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作品概要

 

「モスメン 1966」(「Mothmen 1966」)はアルゼンチン在住のクリエイターを抱えるゲームスタジオLCB Game Studioによって開発されたゲーム作品。全プラットフォームにおいてコーラスワールドワイドが販売を担当。

スタジオのメンバーである小説家Nico Saraintaris、イラストレーターMartinez Ruppel両氏2名を中心に、「ピクセル・パルプ*」シリーズの第1弾作品として作られたヴィジュアルノベルで、今後同シリーズの後続作として「Varney Lake」、「Bahnsen Knights」の2タイトルのリリース予定が併せて発表されている。

(*:ニュアンスとしては、”ドットグラフィックで描く三文小説” といったところ)

 

リンク:LCB Game Studio(Twitter)

リンク:Mothmen 1966(Chorus World Wide official site内)

リンク:Chorus World Wide(Global Twitter)(JP Twitter)

 

モスマンとは?

 

題材にある「モスメン」とは一体なんなのか? 本項では「モスメン」のモデルとなる「モスマン」について以下で簡単に解説。

 

 

モスマン

 

英語表記では”Mothman”。

1966年頃にアメリカ・ウェストバージニア州の一地域を中心に話題となった未確認生物(UMA)。

地元民からは単に「鳥」(バード)と呼ばれていたが、マスコミを通じて「蛾人間」(モスマン)という呼び名で世間に広まる。

 

当時目撃者の証言によれば、体長約2m、背中に大きな翼を持ち、時速160kmで走行中の自動車と同等の速度で飛行する、などの特徴を持つとされる。

その正体については、「鳥類と見間違えた」、「宇宙人のペットである」、「先住民族の呪いだったのでは?」

などの様々な説が挙げられているが、いずれも確信に至るものではない。

 

参考:モスマン wikipedia

 

 

操作方法

 

(※Nintendo Switch版)

JOY-CON(左)
上下左右ボタン カーソル、スクロールバー等の移動
Lスティック カーソル、スクロールバー等の移動
Lボタン オートモード
ZLボタン
-ボタン

 

JOY-CON(右)
Rスティック
Aボタン 読み進める
Bボタン キャンセル
Yボタン
Xボタン バックログの表示
Rボタン 既読スキップ
ZRボタン
+ボタン メニュー呼び出し

 

登場人物

 

ホルト

ガソリンスタンド「ホルト・ステーション」の主人。

幼少期に両親と姉を失い、下半身不随の祖母エルシーに育てられる。

店の経営と祖母の介護の傍ら、レプリカの機関銃パーツを収集しており、”ワイナンズの蒸気銃”を秘密裏に制作中。

リー・ミラー

大学のインターンで歴史学者。父親譲りの整った顔立ちを持つが

そのことが返って、彼にコンプレックスを強く抱かせる要因となっている。

ヴィクトリア・グリーンベリー

大学生。専攻は歴史で、現在リーと交際中だが

恋人である彼には打ち明け難い、ある大きな悩みを抱えている。

ルー・ヒル

作家。ホルトからは、”1杯無料のルー・ヒル”というあだ名を付けられる。

文学にかけては博識で、得意分野の話題となると熱く語る傾向にある反面、空気は読めないタイプ。

 

ゲームシステム

 

以下では「モスメン 1966」のゲームシステムを簡単に紹介。

 

セーブについて

基本的に選択肢以外ならば、どのタイミングでもセーブが可能。セーブスロット数は合計20。

本作には「好きな章から読み返す」といった便利機能は残念ながら備わっていない。各章自体はそう長くないので、お気に入りの章があったらスキップ機能を活用したり、章が切り替わる前後でセーブするクセをつけておこう。

 

選択肢

本編各章では随所で選択肢が出現。

本作のストーリーは基本的に1本道だが、選んだ選択肢によって、その後のメインキャラクターの独白や登場人物の受け答えが若干変化する。

 

ただし、本編後半では選び間違えた時点で即ゲームオーバーとなる場面が多発する。

選択を間違えても直後に選択肢の場面から再開されるのでリトライ自体は容易だが、物語終盤には正しい選択肢を素早く(わずか4秒以内に)選ばないと即ゲームオーバーとなってしまう「時間制限付き」の選択肢が登場する場面も。

 

バックログ機能

本編プレイ中、Xボタンを押すことでバックログを表示。バックログで読み返しが可能な範囲は各章毎に区切られる。

画面右側にスクロールバーが表示される場合は、各種方向キー、もしくはLスティックの上下操作でバーを操作できるが、日本語設定の場合、ログ数が多くなるとバーを操作した際に行間が飛ばされて表示されてしまう現象が見られる。

各章辺りのテキスト量はそこまで多くはないものの、この現象が要因でバックログ機能としての使い勝手はイマイチ。対応可能ならば、今後アップデートによる修正が望まれる。

 

画像ギャラリー

本編を読み進める内、様々な条件を満たすことでギャラリーの各項目がアンロックされる。ギャラリーのイラストはどれもこのモードでしか見られないものばかり。

各サムネイルの下に解放のためのヒントが書かれているので、これを手がかりにしながら本編で色々試してみよう。

 

ソリティア(ミニゲーム)

 

作中のある場面では、祖母エルシーが昔ホルトに教えたというカードゲーム(通称「不可能なソリティア」)をミニゲームとして実際にプレイすることができる。

(一定の場面までゲームを進めると以降、タイトルメニューからも選択可能になる。

 メニューからプレイする場合でもカードゲーム終了後はそのまま本編シーンの続きから始まる仕様となっており、ミニゲームコンテンツとしては独立していない)

 

カードの選び方についてはゲーム本編のシステムをそのまま利用した、”選択肢で選ぶ”という形式になっている。

基本ルールは以下の通り。

  • 合計28枚のカードから成る山札の内、最下段にある表向きのカードを捨て札の表向きのカードよりも1つ多い、もしくは少ないカード1枚を選んで捨てる(K⇔Aのルールに対応)
  • めくるカードがなくなった際は裏向きの捨て札(ストック)から1枚めくり、マークの色を赤か黒かを選ぶ。めくったカードの色が一致しなかった場合はその場で負けとなる

 

世界各地にローカルルールが多数存在するソリティアだがこの「不可能なソリティア」は、”トライピークスの配列”に”クロンダイクのルール”を組み合わせたような内容で、ここに「カード色の二択要素」という追加ルールが加わっている点が難易度を各段に高めている要因となっている。

なお、このミニゲームはギャラリーや実績のアンロックの条件の一部としても組み込まれており、その中には「残りカード枚数15枚以下で負ける」といったものがある。(※あくまで「負ける」という条件になっているところがポイント)

「色の2択」のルールが手ごわい障害となるため達成には少々骨が折れるかもしれないが、リトライは失敗時にその場で何度でも可能なので頑張って挑んでみよう。

 

プレイ後の感想

本場アメリカでは、当時より比較的有名な都市伝説として現代にも伝えられているというモスマン。

本作「モスメン 1966」は、そんな未確認生物モスマンにまつわる現地での過去の目撃例や証言をベースに、4人の登場人物による群像劇ノベル作品として仕上がっている。

 

基本的には「読む」ことと「選択肢を選ぶ」ことの2つの要素で構成された典型的なビジュアルノベルだが、本編内に何度か登場する各種ミニゲームの操作システムにも半ば強引に選択肢を活用している辺り、「読み物のゲーム」であることへの本作の徹底ぶりが覗える。

題材となっているモスマン以外にも、ドアーズ、シェルビー・マスタングなど1966年当時のアメリカ文化を示すキーワードがいくつか作中にも出てくるので、興味が湧いてきたら時代背景への造詣を深めるべく各自で調べてみるのも面白い。

 

*¹:The Doors。1965年に結成されたアメリカ・ロサンゼルス出身のロックバンド。2ndシングル「ハートに火をつけて」が大ヒットし、後に1967年のアメリカ・トップバンドの1つとなる。

*²:米フォード社が製造する乗用車「フォード・マスタング」をベースに、シェルビー社がチューニングを行った特定の車種を指す。1965~1969年にかけてレーシング向けモデルとして販売。

 

計10章前後にもわたるチャプター数に比べて1章辺りのテキスト量はそう多くなく、全編のボリュームは比較的短め。

実際1ページ(=Aボタンによるテキスト送り1回分)辺りのテキスト量は長くても3行以内に収められているので、活字が苦手というプレイヤーでも比較的とっつき易さを感じられるはず。

 

選択肢の選び違いやタイムロスでゲームオーバーに辿り着くことはあっても、物語が分岐するということは一切なく、じっくりと読んでみても結末に至るまでは2時間とかからない。所要時間的にはちょうど映画作品1本分相当くらいのボリュームだ。

そのため、トータルなプレイ時間面で見た場合は物足りなさを覚えるかもしれないが、一方でドットグラフィックによる劇画調のカットシーンはかなり贅沢に用意されており、ピクセルアート好きな諸氏にとってはこの1点だけでも本作は非常に魅力的に映る。

16色テイストで統一された上述のビジュアルに加え、PSG風のサウンドも非常に「当時らしさ」を引き立てており、PCレトロゲームファンにとっては80年代PCによく観られたアドベンチャーゲームを強く想起させることは間違いなし。

 

60年代、パルプ・フィクション、UMA、etc…

その他、作中に散りばめられた味わいあるエッセンスの数々は、本作が間違いなく「雰囲気で酔わせる」作品であることの証左に他ならない。

 

元がUMAである存在を題材として扱っていることもあり、当のモスマン自体については作中で何も明らかにされない辺りはある意味必然と言える流れかもしれない。

しかし万一、物語の内容に満足できなかったとしても、モスマンというその異様な存在は大きなインパクトを残して、読み終えた者の記憶の中にぼんやりと残るはず―

 

本作は、海外ドラマ「X-FILES」やUMAにまつわる科学系ミステリーファン、もしくは大衆向きな読み物は好物、というノベルゲーム経験者の方にこそ強くオススメしたい一作。

“レトロ感溢れるピクセルアート”と”三文小説”の融合による、ノベルゲームの新ジャンル「ピクセル・パルプ」ならではの味わいを是非、「モスメン 1966」で味わってみて欲しい。

 

評価

 

個人的スコア(10点満点中) 7.0

 

良い点

  • 80年代初期のPCアドベンチャーゲームのようなテイストのノスタルジック溢れる4色風グラフィックとサウンド
  • 極めて高い安定感を誇る丁寧なローカライズ
  • パルプ・フィクションらしいチープさが漂う、B級映画のような味わいのある内容

 

惜しい点

  • 1本のノベルゲームとして見ると、全編ボリュームはかなり短め
  • 本編内の全ての操作が選択肢を選ぶという形で進行するため、作中に登場する一部のミニゲームが遊び辛い
  • (※Nintendo Switch版)会話履歴をチェックする際にカーソルを細かく上下できない影響で、スクロールするたびに数行程度の間隔が空いた形で読むことになる

 

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