Legal Dungeon(リーガルダンジョン)- プレイ後の感想と作品解説【レビュー】

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©2019, 2020 SOMI Inc., Licensed to and published by Active Gaming Media, Inc.

 

※このゲーム内の物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。

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基本情報

 

タイトル Legal Dungeon
対応機種 Steam,Nintendo Switch
販売 Somi(Steam版),PLAYISM(Switch版)
開発 Somi
発売日 2019年5月7日(Steam),2021年2月25日(Switch)
対応言語 日本語, 英語, 韓国語, 中国語 (簡体字)
備考 IARCレーティング:16+(激しい言葉づかい)

 

作品概要

 

「Legal Dungeon」(「リーガルダンジョン」)は韓国のゲーム開発者SOMI氏製作、販売によるゲーム作品。NintendoSwitch版のパブリッシングはPLAYISMが担当。

本作は新任警部補*・清崎蒼(きよさきあおい)の視点となって捜査書類を作成するゲーム。担当事件の意見書を作成し、被疑者が有罪にあたるか?無罪にあたるか? その最終的な結論に至る事が目的となる。

(*設定上の階級は「警部補」だが、作中では翻訳上の表現や部下毎の対応の違いにより呼称が「係長」表記である場面がほとんど)

 

“事件調書の作成”というこれまでに類の見ない切り口で踏み込んだ内容で、法曹を題材としたゲーム分野に一石を投じる新たなジャンルとも言えるべき一作。窃盗、遺棄致死、DV、殺人といった重大犯罪に関する事件調書を覗き見るかのようなゲーム内容は、社会派的な一面を覗かせるかなり攻めた作風となっている。

 

インディーゲームパブリッシングを担うPLAYISMの運営会社、アクティブゲーミングメディアの協力により非常に高精度なローカライズが実現。全編を通してテキストのボリューム比重が大きい本作において、極めて自然な文体の調書は事務的な内容ながらも読み応えが高い。

同開発者が手掛ける「Replica」、「The Fake」の2タイトルと併せて、本作は「罪悪感三部作」と称されている。いずれもNintendo Switchで配信されているが、「The Fake」のみパブリッシャーが異なるため、検索時は要注意。

 

リンク:SOMI 소미(X(Twitter))

リンク:Shinyuden(X(Twitter))

 

操作方法

 

(※Nintendo Switch版)

JOY-CON(左)
上下左右ボタン カーソルの移動
Lスティック 同上
Lボタン
ZLボタン
-ボタン

 

JOY-CON(右)
Rスティック
Aボタン 決定、(長押し中)ドラッグ、(ドラッグ中ボタンを離して)ドロップ
Bボタン キャンセル
Yボタン
Xボタン
Rボタン
ZRボタン
+ボタン メニュー

※携帯モードでのプレイ時は、上記操作に加えてタッチスクリーン操作にも対応

 

本編の流れとゲームシステム

 

チャプターツリー

本編はツリー形式のチャプター制になっており、一度視聴したチャプターは同画面上から自由に閲覧や分岐設定を行うことができる。

進め方次第で未到達のチャプターが表示された状態になる事もあるが、分岐を経て一度でも当該チャプターを視聴しない限りは自由に選択することはできない。

ストーリーが進む条件には清崎の評価が重要となるので、ベストエンドを観たいのであれば結果としては正しい選択をする必要がある。

 

また一度トゥルーエンドを迎えると、以降は意見書完成後にルート分岐が行われるチャプターにおいて、一度見た範囲内であれば進行ルートを自由にセットすることができるようになる。

(青い盾のマークが被疑者が無罪のルート、赤い手錠のマークが有罪ルートをそれぞれ記している。紙のマークを選んだ場合は選択中チャプターの意見書作成パートを新たに開始する)

特定のエンディングに到達したい時の条件フラグ立てに活用すると良いだろう。

 

鍵について

チャプターの中にはロックされたものが存在しており、これを開錠するためには、エンディング到達ごとに入手可能な「鍵」が1つ必要となる。

犯罪事件の裏側で本当は何があったのか― 閉ざされたチャプターを覗き見ることで、その真相へ迫る手がかりとなるかもしれない。

 

スクリーンメイトショップ

チャプター選択画面左上にある「👜」アイコンをクリックすると、スクリーンメイトショップへと移動。ここでは戦闘パートで獲得したコインと引き換えに、ゲーム画面を彩るアクセサリーを購入することができる。

 

商品名 備考 必要コイン
色とりどりのイースターエッグ 正体不明のどうぶつから入手した卵に色を塗ったもの。割れ物注意。

「器物損壊」

8
かわいいクリスマスツリー 近くの山から持ち帰ったモミの木にキラキラの飾りを付けた。

「森林窃盗罪」

13
キラキラLED飾り 安全基準を満たしていないLED照明をつなげたもの。

「消費生活用製品安全法違反」

18
にゃんこ☆ポップアップ 許可なく有名ゲームのポップアップデザインを使っている。

「著作権法違反」

(SingleCoreGames製作「Frincess&Cnight」からのゲストキャラクター)

31
娘を探す父親たち ゲーム「RETSNOM」のキャラを連れてきている。

「監禁」

(SOMI氏の開発ゲーム「RETSNOM」の出演キャラクター)

45
ゾンビウィルスに感染した娘 感染者隔離措置を無視して、ゲーム「RETSNOM」の外に出ている。

「感染症予防法違反」

(SOMI氏の開発ゲーム「RETSNOM」の出演キャラクター)(※娘を探す父親たち購入後に購入可能)

99

 

色とりどりのイースターエッグ

いずれも意見書作成画面上にちょっとした変化を与える”デスクトップアクセサリ”のような役割を果たすもので、特別な効果は一切持っていない。

実用性の無い完全なる趣味要素的なコンテンツだが、コインの用途もここしかないので、気分を変えてみたくなった際には試しに1つ買って飾ってみるのも一興だ。

 

会話パート

会話パートでは、それぞれのエピソードに関わる人物同士のやり取りが展開。主に登場するのは主人公である清崎と、彼女が受け持つ三人の部下達、警察組織や検察に関わる役職の人物など。

ただし、作中において清崎の台詞はテキストによる描写が一切登場せず、発言を行うシーンでは階級章を示すBGが一瞬挿入されるのみ、といった手法が用いられている。

各場面で清崎は一体何を思い、どのような事を言っていたのか、といった点に想像を巡らせ、考察する事も本作の楽しみ方の1つとなる。

 

意見書作成パート

本作のメインパートであるとも言える意見書の作成。このパートでは、書類作成に特化した専用プログラム「CIS*」を介して担当事件の意見書を作り上げていく。

(*Criminal Information System。「刑事情報システム」。法務部、検察庁、警視庁の共同製作プログラムで、刑事事件の書類作成、管理の簡略化を図る目的で作られた)

 

このパートでの目的は、意見書を全て書き上げること。と言ってもプレイヤーが行う操作は、一通りの書類に目を通すことと意見書フォームに順次出現する各チェックマークをクリックするだけという簡単なもの。

調書のテキスト内で重要な項目はそれぞれ、人名(オレンジ色)、マイナンバー(赤色)、刑法(青色)、要点(緑色)、と各カテゴリ毎に色分けがされているため、確認が容易となっている。

下準備として、意見書フォームの完成が前提となるので、まずは意見書フォームの各チェック項目に必要な情報を入力。やり方は、『刑事事件捜査書類』の各ページから該当する色文字箇所にカーソルを合わせ、ドラッグ&ドロップで放り込む形だ。

(毎回全ての項目で手動入力を要求されるわけではなく、チャプターが進むに連れて直接入力が必要とされる項目以外は半自動で済まされるようになったりと次第と簡略化されていく傾向にある)

 

書類のページを表示していくことで、意見書フォームにあらかじめ記されている「1.被疑者基本情報」、「2.犯罪経歴」等の各項目に内容が自動で書き込まれていくので

 

刑法/判例の確認

犯罪に関する情報は「関連法令」のカテゴリ内に「刑法」として分類されている。確認したい刑法の項目にカーソルを合わせ、Aボタンでを押すことで詳細ポップアップが展開。

 

上画像は例として「侮辱」について調べた際のもの。法令の詳細に目を通していくと、巻末に2件の関連判例が記載されている事を確認できる。過去の判例は”99あ127“と言った具合に判決番号で簡略的な表記で扱われている。

 

判例となっている過去の事件記録の詳細を知りたい場合は、青字で記された判決番号にカーソルを直接合わせてAボタンでドラッグを行い、そのまま画面上部にある検索フォーム(上画像)に放り込んでみよう。

刑法の項目はチャプターが進む毎に新たに追加されていくので、しっかりと目を通しておこう。時には以前扱った事件の罪状が手がかりになることも…?

 

被疑者(敵)との戦闘

意見書フォームへの書き込みが終わると、「ダンジョンに入る」という表示が出現。カーソルを合わせてAボタンで決定することで『戦闘開始』の合図と共に、事件の被疑者(※戦闘画面内では『敵』と表示される)との舌戦が繰り広げられる戦闘パートが幕を開ける。

 

戦闘画面をアクティブにした状態でAボタンでテキストを読み進めていくと、被疑者が投げかける疑問に対する根拠を提示するための設問が随時登場する。

回答方法は意見書作成パート同様、捜査書類全ページの中から色文字で記された適切な一文をドラッグ&ドロップで回答項目に放り込むだけ。

 

根拠として相応しい句を一つ投げつけることで剣のアイコンが被疑者を刺し貫き、1点のダメージを加えられる。反面、選んだ句が不適切であった場合は反撃を喰らってこちらのHPにダメージが加えられてしまう。(ただし被疑者からの反撃は、偶にMISS判定が登場して無傷で済む場合もある)

戦闘はこのやり取りを双方どちらかのHPが0になるまで続けられるが、こちらが先に0になった場合はその時点でゲームオーバー。勝利した場合は被疑者側に表示された「G」の数値分のコインを獲得。ここで獲得したコインは、上述のスクリーンメイトショップで利用可能だ。

 

意見書の仕上げ

被疑者への尋問終了後、意見書の仕上げと捜査係長の捺印を以て、意見書作成は終了となる。

「捜査結果および意見」が自動的に書き上がると同時に「電子署名」のポップアップ(上画像)が出現するので、刻印部分にカーソルを持っていきドラッグ。意見書フォームの内、ページ下部の好きな余白スペースにドロップすることで押印は完了。会話パートを挿んだ後に、送致から結審までの履歴が表示される。

 

裁定

法廷での議論が交わされた上で被疑者に対して有罪、もしくは無罪判定が下される。

この際、提出した意見書の結論に基づいて、警察署員としての成果ランクと法機関評価ランクの2種類のランク評価判定が行われる。

 

成果ランクは犯罪の取り締まりによって上昇。軽犯罪か重犯罪か、扱う事件の重要性如何でその変動率が大きく異なる仕組みとなっている。加えて検挙の成否は、戦闘パートにおけるステータスパラメーターの変動にも関わる。変動によってHPが0になるような著しい低下を招いた場合、その場でゲームオーバーとなるので注意。

法機関評価ランクは警察、プレイヤー、司法の三つの立場からの視点による最終結論が一致することで上昇。いずれか1つでも違う結論を下した場合は変動なしか場合によっては減少することもある。

 

プレイ後の感想

「リーガルダンジョン」は”法の迷宮”というその表題が示すように、清崎蒼が取り扱う計8つの事件を通し、法の下に執行される”正義”の在り方をプレイヤーにも問う深い作風となっている。

 

まず、本作は推理型のミステリー作品ではなく、あくまで”意見書の作成”が目的のゲームであるという点はご留意頂きたいところ。

担当事件ごとに複数枚用意された捜査書類の内容を頼りに被疑者を尋問、清崎としての視点で被疑者に対する相応しい裁きは有罪であるか無罪であるかを定めて、意見書を完成させる― 今作のゲーム内容を大まかにまとめるとすれば、こういったところに落ち着くだろうか。

 

法執行に関わる事務職に携わっていたという製作者の過去の経験を元に作られたという本作。作中の警察組織における”検挙実績による評価制度”が物語では大きくクローズアップされている。

「善行の美談は0.5点、窃盗犯は2点、殺人犯は15点」

常套句のように、ゲーム内では幾度も目にする機会が多い上記の一文。これは発生した犯罪の重大性によって事件担当署員の評価が行われる採点方式を詩的な表現を以て詠んだものだ。

作中では上記のように1つのチャプターが終わる毎にこうしたポエムが挿し込まれるが、ここから作中の法や警察の体制にどういった想いを感じ取るかはプレイヤーに委ねられている。

 

プロローグの時点から早速本作のゲームシステムが登場するが、概ねアシスタントであるあおいのチュートリアル通りに進めて行けば行き詰まるようなことはない。

ただし、本編ではルート分岐が用意されており、誤った判断で取り調べを終えた場合は物語がバッドルートへと寄って行ってしまう。

特に分岐の上で重要となるのが作中で「戦闘」と称される”被疑者への尋問”で、根拠の提示を求められる場面では二通りの解答が用意されていることがある。

ここで突き付けた指摘内容如何によって、被疑者のその後の裁定が無罪、あるいは有罪に決まる事で、その後の展開に作用するという形だ。

 

一般的なゲームオーバーも含めて計14通りものエンディングが存在する本作だが、トゥルーエンドは1つのみ。

成果ランクと法機関評価ランクの2つもストーリー進行上重要な要素で、高いランクを目指すためには両方の意見が一致する必要がある。

担当事件で双方いずれかの考え方と不一致となる意見書を提出した場合はランクが著しく下がり、そのままゲームオーバーへ一直線と言った場合もあるので、注意が必要だ。

 

警察組織を中心とした作品ながら、本作では書類作成とテキストで綴られる新任警部補と三人の部下達、被疑者との尋問によるやり取りがメインとなっている。

新任警部補として、清崎が受け持つことになる三人の部下達はそのスタンスも三者三様。

純粋に犯罪を憎み徹底的に検挙に勤める者、周りを荒立てることなく現環境で要領よく立ち回る者―

作中では評価制度が成り立っている警察組織で、署員として必死にもがきながら従事する者達の日々が描かれる。

 

この手のドラマではお約束となるバディとの共同捜査やカーチェイスのような痛快なアクションシーンは一切登場しない。

プレイ時間の大半はキャラクターの立ち絵も介さない部下達との会話シーンや活字にまみれた捜査書類とのにらめっこに費やされており、映像的には極めて地味な作風ではある。

 

しかし、その水面下では単なる勧善懲悪ものでは収まらない厚みのあるドラマがひっそりと描かれていく点は本作の見所の1つ。特に終盤に向けての衝撃的な展開は見逃せず、本作に触れた方には最後まで確かめて頂きたいところ。

PCベースのゲームデザインにつき、コンソール移植版では操作周りで少しやり難さを感じる部分もあるが、人間ドラマの中でも取り分けリーガル系作品がお好きという方にはおススメの一作。「リーガルダンジョン」、是非お試しあれ。

 

評価

 

個人的スコア(10点満点中) .0

 

良い点

  • 調書作成という作中ジャンル自体の新鮮さ
  • 多様な刑法やそれに伴う過去の判例がゲーム内資料として登場。法律に興味を持つ切っ掛けとなるかも
  • 単なる事務処理的な内容に終始しておらず、ゲーム進行に応じてその裏側でストーリーも展開を見せていく

惜しい点

  • 完全テキストベースなゲームデザインにより映像的には終始地味
  • 全編を通して文字がビッシリ詰まったシーンばかりが続くことから、大型サイズのモニターを用意できない場合は読み難い場合がある
  • カーソル感度があまり良くない上に、オプションに設定項目がないため調整することもできない

 

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