神無迷路 (Nintendo Switch版)- プレイ後の感想と作品解説【レビュー】

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© 致意 2024

 

基本情報

 

タイトル 神無迷路
対応機種 Steam/Nintendo Switch
販売 至意
開発 (同上)
発売日 2022年5月15日(Steam版)/2024年8月8日(Switch版)
対応言語 日本語, 英語, 中国語 (簡体字), 中国語 (繁体字)
備考 IARCレーティング:16+(激しい暴力)
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作品概要

 

「神無迷路」(かんなめいろ)は上海のゲームクリエイター至意氏が製作、販売を手掛けるゲーム作品。ジャンルはサウンドノベル。

北陸地方某所に居を構える利根地下研究所、そこで行われるアルバイトに志願した被験者達は地中深くにあるという研究室内で奇妙な出来事へと巻き込まれていく。

 

作中ではサイエンスフィクション、ミステリー要素を強く盛り込んだ物語が展開。また、キャラクターの台詞に該当する部分では声優陣によるボイスが挿入される(オプションでオンオフが可能)。

特徴的な青色の人型シルエット演出は、往年のサウンドノベル作品の雰囲気を強く彷彿とさせるものとなっている。

 

リンク:至意(X(Twitter))

 

ストーリー

 

(※ストアページ紹介文より引用)

 

入学試験に失敗し、3年間も浪人生活を続ける主人公、波立 良志(はりゅう りょうし)。

貧困に喘ぐ彼は、謎の地下研究所のアルバイトに応募する。

しかし実験の日、9年前に死んだはずの幼なじみ、小酒井 澪(こさかい みお)と不思議に再会した。

 

懐かしい夏の記憶が蘇り、良志は混乱に陥る。

幼なじみの謎の復活、時間の逆行、閉鎖された空間での連続殺人

良志は運命の迷路を抜け出し、逆境を覆す鍵を握る答えを探し出せるのか。

 

 

操作方法

 

(※Nintendo Switch版)

JOY-CON(左)
Lスティック 選択肢の選択
上下左右ボタン (同上)
Lボタン バックログ表示
ZLボタン
-ボタン

 

JOY-CON(右)
Rスティック
Aボタン 読み進める*
Bボタン スキップ
Yボタン 自動モード
Xボタン メニュー
Rボタン テキストを隠す
ZRボタン
+ボタン

(*携帯モードプレイ時は、画面タッチでも同じ効果となる)

 

ゲームシステム

 

ゲームの進め方

「神無迷路」の遊び方は、テキストを読みつつ区切り毎にAボタンを押して進行。時々現れる選択肢ではいずれか1つを選ぶことで、その後の展開が分岐していく。といったスタンダードなサウンドノベル方式。

それ以外の細かい機能に関してはボタン割り当てが他作品と異なっている場合もあるが、過去に同じジャンルを一度でもプレイしたことがあれば、自然に馴染むシステムであると感じられるはずだ。

 

メニュー画面、フローチャートシステムについて

本編プレイ中、Xボタンでメニュー画面が展開。登場人物や舞台となる地下研究所の地図の確認、各種設定もこの画面上から行える。

また、メニュー画面左側には辿って来た物語の道筋が「ノード」という構成単位を軸にフローチャート方式で表示されるようになっており、一度通ったノードや分岐はフローチャート上に記録され、自由に選んで遡ったり先の展開に進んだりと自由に行き来することができる。

未到達のエンディングやまだ選んでいない分岐の回収にはこの機能をフルに活用していこう。

 

しおりについて

フローチャート画面の下部にある小型メニュー内の項目「しおりを挟む」にカーソルを合わせてAボタンを押すと、メニューが表示。現在開いているページにしおりを挿むことができる(最大で3つ)。

挿んだ場所にジャンプしたい場合は、同じメニュー上から「しおりを辿る」を選び、スロットを選択すればOK。

特定の段落毎にノード単位で区切られているフローチャートとは異なり、既読の範囲内であればお気に入りの箇所を記録した上でブックマーク済みの段落へピンポイントでジャンプすることができる。

お気に入りの段落であったり、次周プレイ時のショートカットなどを理由に手軽に読み返したいという時は、フローチャートと上手く併用してみよう。

 

心印について

一つの結末を迎えた際に、「心印」が手に入ることがある。心印を入手したタイミングで、本編内の何処かにある”ロックされた選択肢”を開錠することができる。

 

ただし本作を初めてプレイする場合、各心印は実際に手に入れてみるまでは何処の選択肢のロックに対応しているのかは分からない。先の展開が見たいというのであれば、選択肢をどんどん選んでいって一つでも多くの結末に辿り着くしかない。

 

登場人物

 

(※下記表内の人物紹介文ではゲーム内テキストから一部簡略化しています)

波立 良志(はりゅう りょうし) 本編主人公。21歳男性。

三浪中の受験生で、家賃滞納中。お金のため、利根地下研究所の怪しい実験に参加した。

趣味はバーチャルライバーの動画視聴。

霜月 時雨(しもつき しう) 民間伝承に詳しい謎めいた少女。

彼女とは良志が研究所行きのバスから降りた際、初めて出会うことになる。

斎藤 忠明(さいとう ただあき) 髪を後ろに撫でつけた長身の大学生。

小酒井や雪村とは面識があり、2人を先輩と呼んでいる。

雪村 萩乃(ゆきむら はぎの) ポニーテールの女大生。

小酒井、斎藤とは面識がある一方、馴染みのない相手に対しては強い態度で臨むことが多い。

黒川 源次郎(くろかわ げんじろう) 帽子が特徴的な中年男性。

プロの馬券師を自称しており、彼の人生は様々なギャンブルに囲まれているようだ。

蕗屋 勇太(ふきや ゆうた) 丸みを帯びた体形の若い男性。

ポテトチップスの袋を常に手に持っている。実験参加に際して持ってきたスーツケースの中は食べ物で一杯。

若林 和夫(わかばやし かずお) 利根地下研究所の中心的人物。

研究所の各部署で活動しており、良志たち実験関係者を研究所まで案内する役割を担う。

小酒井 澪(こさかい みお) 良志の幼馴染。21歳大学生。

軽音楽サークル所属で、雪村や斎藤と面識がある。実験には理想のギターを手に入れるためという理由で参加。

清水 美紀(しみず みき) 研究所に在籍する女性研究者。

暗黒物質探査の分野において、世界的な専門家と評されている。

武田 直樹(たけだ なおき) 研究所の警備員。がっしりとした体格の持ち主で、驚異的な力と体力を持つ。

職務に忠実で、科学者たちの安全を最優先する強い責任感を持つ。

 

 

プレイ後の感想

「神無迷路」は一見でも伝わるように、実写テイストのBGと青色の人物シルエットという取り合わせのビジュアルは、真っ当な「かまいたちの夜」リスペクトであることは想像に易い。無類のサウンドノベルファンであれば、この2点だけをとっても無条件で嬉しくなってしまうという方も多いだろう。

製作者のXアカウントプロフィールによれば当人の活動拠点は上海となっているが、解像度の高い純日本的な設定や舞台が多く起用されている点は非常に興味深いところ。加えて精度の高いローカライズによる違和感をほぼ感じない文章回しからは、うっかり国産のゲームかと見間違う程だ。

 

言語切り替えやフォントサイズの変更も可能であるなど、オプション面も細やかに行き届いている。作中ではキャスト陣による名演も見所の1つとなっているが、必要ないというプレイヤーにとっては任意でボイスのオンオフ切り替えも出来る。プレイヤーの好みに応じて限りなくカスタマイズ可能なのは嬉しい配慮だ。

また、この手の作品内ゲームオプションでは比較的珍しい設定項目としてフォントの変更機能が見られ、今作では本編中テキストの書体を「さつき現代明朝」、「クレー One」、「源ノ明朝」の3種類から選択することができる。

字体そのものに大きく目立つ違いはないが、好みで変えてみる事で気分を変えて遊ぶことができるかもしれない。

 

物語は一応はミステリーものとして展開していくが、もう一つのジャンルであるサイエンスフィクションが大きく絡まってくることで、次第に複雑さを増していく。

作中では比較的早い段階で特定の科学分野が題材として登場するが、各用語からは同じテキストベースADVの”あの作品”を思い出す方も多いはず。

SF的要素が入り込むことから、遊び手によっては嗜好に上手く嵌らず、期待した感じのストーリーではないと感じてしまう事になるかもしれない。

 

本作は最初から真エンドに辿り着ける仕組みになっておらず、何度もバッドエンド的なルートを辿って、ロックされた選択肢を開錠するために鍵となる「心印」を見つけて行く必要がある、といった「レイジングループ」に似た形式が起用されている。

バッドエンドありきのノベルゲームにおいては、このような仕様自体は別段珍しくはないが、初回はどう選んでも結末が固定されていることから、プレイヤーの手で展開を選ぶ、という意味では自由度が低くなるのは少し惜しまれるところだ。

 

コンプリートまでの所要時間は7~10時間といったところで、この点については、プレイヤ―個々の読むスピードや全文をボイス込み(オプションでオフにすることも可能)でじっくりと堪能するかどうかに依るところも大きい。

全体を通しての完成度は高く、演出の品質も高水準。その上での500円という低価格設定には驚きを隠せない。このコストパフォーマンスの高さも本作を紹介する上での大きな魅力として映るだろう。

 

奇しくもこの9月には、サウンドノベルの本家本元とも言えるメーカーであるスパイク・チュンソフトより、シリーズ30周年記念タイトルとして「かまいたちの夜×3」の初移植版が各プラットフォームにて発売を控えている。

同じNintendoSwitchにおいては、そんなタイミングでの登場となった本作だが、令和の時代に斯くも”純サウンドノベル”然とした新たな作品に出会えたことは筆者にとって、大きな僥倖となった。

ノベルゲーム全般に興味があるというプレイヤーは本作「神無迷路」を是非お試しあれ。

 

評価

 

個人的スコア(10点満点中) 8.5

 

良い点

  • 青色の人物シルエットによる往年のサウンドノベル的演出
  • 各人物の台詞部分はキャストによるフルボイス(オプションでオフにすることも可能)
  • 高い完成度に比してワンコインで購入可能、とコストパフォーマンスに優れる

 

惜しい点

  • 基本的に大きな1本のストーリーに添って展開を見せるに留まり、〇〇編といったマルチストーリー的な広がりはなし
  • 地図システムはただ各階の広角図を眺められるだけの機能に留まっており、飾り的な意味合いが強い
  • 全編中のほんの一部だが、同一人物の発言において前後で口調の齟齬が見られる箇所がある

 

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