基本情報
タイトル | デッドゾーン |
対応機種 | ファミリーコンピュータ ディスクシステム |
販売/開発 | サンソフト |
発売日 | 1986年11月20日 |
備考 | ディスクカード両面(A/B面)仕様 |
©1986 SUNSOFT
あらすじ
建造中のスペースコロニー「ライオネックス」の廃棄所エリアでカークが目覚めるところから物語は始まる。
「何故俺は、ここにいるんだ!?」
冒頭で突然流れる音声合成によるカークの叫びが、プレイヤーの度肝を抜いてくる。「デッドゾーン」という作品においての特徴の1つがこの音声合成だ。ゲーム本編ではここから操作可能となるが、基本ルールは場面ごとに用意されたコマンドを駆使して先のエリアへと進んでいくといったもの。
ゲームの概要
「デッドゾーン」はサンソフトが開発、販売を手掛けたファミリーコンピュータ ディスクシステム用のアドベンチャーゲーム。プレイヤーは新型スペースコロニー建造のチーフ技術者カークとなり、婚約者であるマリーの行方を求めコロニー内を捜索して行くといった内容。
ファミリーコンピュータ機上でプレイできる本格アドベンチャーゲームとしては、「ポートピア連続殺人事件」(1985年 エニックス) に次ぐタイトルで、ディスクシステムタイトルでは全参入メーカーを含めて今作が初。画面上半分をビジュアルカットに、下半分をテキスト&コマンド表示に、とインターフェースではビジュアルを大きく全面に出した画面構成が特徴で、この点は後に同社がROMカートリッジでリリースする「リップルアイランド」(1988年)でも活かされている。
操作方法
十字キー | カーソルの移動 |
Aボタン | 決定 |
Bボタン | コマンドページ切り替え(※コマンドが7種類以上ある場合) |
STARTボタン | 決定したコマンドのキャンセル(※選んだコマンドはキャンセル不可) |
SELECTボタン |
アドベンチャーゲームにおけるスタンダードな操作のみで取り分け難しいものはないが、注意したいのはBボタンの機能。
(廃棄所エリア特定パートでのコマンド1ページ目)
(同上2ページ目)
操作方法項目の青字での注釈通り、本作ではコマンド表示欄に一度に表示されるコマンドが6種類までとなっており、7種類を超えるコマンドが登場する場面ではページを切り替えないと表示されないものがある。ゲーム開始直後にいきなりこの状況に直面することになるので、もしもこの機能に気づかない状況で進行に行き詰まった場合はBボタンでページを切り替え出来る事を思い出し、まだ試していないコマンドを選んでみよう。
システム
「キャリー ドエース」
廃棄エリアで合流することになるロボットのキャリーは、マリーの誕生日にカークがプレゼントとして贈ったもので、何故かカークと同じく廃棄所内で発見される。登場時はバッテリーが切れている状態なのだが、この問題を解決した以降はカークの同行者として参加し、共にスペースコロニー探索を行うことができる。
参加といってもビジュアル上で登場する事はほとんどなく、普段は選んだコマンドに対してボケたり相槌を打ってきたりといった具合で、ロボットであることを忘れるほどにとても表情豊か。シリアスなテイストで展開する物語の中、随一のマスコットキャラクター兼ムードメーカーと言って良い存在だ。
彼に相談するための「キャリー」という専用コマンドもあるので、困ったら彼に頼ってみるのもいいだろう。
ミニゲーム
中盤のある場面でディスクの入れ替えを要求されるタイミングが登場するが、入れ替えとローディングが終わった直後、作中の雰囲気に似つかわしくないゲームのタイトル風画面へと突然切り替わる。
「でっどぞーん」とひょうきん気味なフォントで脱力感を漂わせているが、これは同社のアクションゲーム作品「いっき」(1984年)のタイトル画面をパロディ化したもので、本編内でこれといった前触れもなく上記のタイミングで挿入される。
直後、軽快な音楽に併せてキャリーを操作し、仙人が投げるおにぎりをひたすらキャッチするというボーナスステージ風のミニゲームが展開。こちらも上述の「いっき」に登場するボーナスステージのパロディ。1つたりとも漏らさずに全て拾いつくすことが先に進むための条件となっていて、パーフェクトプレイでない場合は例外なく強制リトライとなり、先に進むことができない。
作中、ここだけ余りにもゲーム展開が大きく異なるため、かつてプレイした方にとっては印象に残っているイベントの筆頭に数えられるのではないだろうか。
デッドゾーンに登場する”迷言”一例
キャリーの一挙一動に限らず、本作はシステムテキストの方も比較的はじけ気味で、ゲームオーバーの際には「シンデ マッタ ガヤ モウ 1カイ ヤロマイ」と三河弁で告げてきたりと茶目っ気に溢れて(?)いる。作中のユニークなテキストは上記以外にも
「ソンナコトヲ シタラ クリアー デキナクナッテ シマイマス」
「キャリー:ココハ ソンナニ ムツカシクアリマセン」
「ハーイ コチラハ SUNSOFTデス」
など、メタ発言も混ざっていたりでやりたい放題。設定こそハードSFな雰囲気を放つ「デッドゾーン」ではあるが、独特の緩い空気を持った80年代アドベンチャーゲームらしさと、元々この当時ゲーム内にノリの良いテキストをよく取り入れていた傾向のあるサンソフトらしさにも溢れたユニークなノリが全編に溢れている。
ゲームを遊んだ感想
「デッドゾーン」はディスクシステム登場後、ファミコン上ではそれまでに類のなかった本格的なテキスト&ビジュアル形式のアドベンチャーゲームの先駆けとなった作品であるとも言える。
当時のROMカセットタイトルのおよそ3倍の容量を利用可能なディスクカードの登場によって、取り分けアドベンチャーというジャンルにおいてはより多様な表現が可能となり、本作の登場以降ファミコンでは同形式のアドベンチャーゲームタイトルが登場していくこととなる。
また本作の特徴となる音声合成だが、サンソフトのこの技術は後にROMカートリッジで同社が発売する「天下のご意見番 水戸黄門」(1987年発売)や、続編「水戸黄門Ⅱ 世界漫遊記」(1988年発売)などの作品に応用されている。時代劇作品ファンにはお馴染み「水戸黄門」を原作とするタイトルだが、「この紋所が目に入らぬか」で劇中ではお馴染み、格さん助さん両名の名口上を流暢に喋らせることに成功している。興味がある方はこちらも必聴だ。
1本のアドベンチャーゲームとして見るとシステム的な複雑さはなく非常にシンプルな造りで、手順さえ知っていれば20分ほどでエンディングまで一直線で進めてしまうボリュームとなっている。(むしろ前知識なしでプレイする場合、最も難しいのは最初の廃棄所エリアからの脱出や、おにぎりキャッチのミニゲームではなかろうか)
不意打ちで挿まれるギャグテイストのテキストや、中盤に唐突に挿入される上述のミニゲームなどのサンソフトらしい遊び心も相俟って、一度プレイすることで不思議な魅力を放つファミコンアドベンチャータイトルとして印象付けられることは間違いない。現在に至るまで他プラットフォームでの復刻は一度も行われていない分、実際にプレイするとなると完動品ハードウェアの確保からといった少々敷居の高さはあるが環境が整っている方は是非遊んでみよう。
評価
個人的スコア(10点満点中) | 6.5 |
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良い点
- 画面構成を大胆に振り分けたことで、大きく映し出されるビジュアルカット
- 音声合成の採用。出番はほんのわずかながらも、サンソフトの職人的な技巧が光る
- ファミリーコンピュータでは希少な、クラシックスタイルのSFアドベンチャーゲーム作品
惜しい点
- 進行中はゲーム内ヒントが少なく、1つ1つコマンドを試しながらのプレイにおいても特定のポイントで行き詰り易い傾向がある
- シリアスとギャグの境界が曖昧気味な本作独特のテイストは好みが別れる部分かも
- マニュアルに目を通さずに始めた場合、コマンドの種類(ページ)切り替えに中々気付かない可能性がある