Catmaze - 感想&スラヴの神々と精霊に関するミニ辞典【レビュー&資料】

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おまけ:スラヴの神々、及び精霊に関するミニ辞典

 

「Catmaze」では、東ヨーロッパ圏に古来より広く伝わるスラブの伝承や神話に関連の精霊、神をモチーフとしたキャラクターが多数登場する。

ゲーム内での描写はそれぞれ、単語や性質についてさらっと触れられる程度で済まされているが、興味がある諸氏は関連書籍やネット検索を通じ、それぞれの背景を調べてみると物語への理解がより深まるかもしれない。

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以下に簡素ながら、ネット上の様々な記述を参考に作中の各キーワードに関するメモを作成してみた。物語のイメージを膨らませる一助となれば幸いである。

(東欧広域圏の情報を手探りでまとめているため、テキストについては拙い部分も見られますがあらかじめご了承下さい。)

 

ドモヴォーイ(Domovoj/домово́й)

家の精。名前は、スラブ語派による「家、家庭」を指す言葉”dom”から由来する。
毛深い老人や小人の容姿で表現されることが多く、人家の暖炉や地下室、玄関といったところに住み着く。

彼らは火や暖かさを好むが、もしも住人の何れかがドモヴォーイを怒らせた場合、その家は火災に見舞われると言われている。
その他にも、泣き声は家族の誰かの死が近い報せである、気に入らない家族にはいたずらをしかける、など家人に深く関わる事も多い。

 

シリン(Sirin/Сирин)

ロシアの民間伝承に登場する生物。”悲しみを司る魔鳥”して知られる。
フクロウに似た鳥の外見を持ち、美しい女性の頭と胸を携えている。

シリンの歌声は限りある命を持つ人間にとっては危険なものとされ、聴いた者は記憶を喪失したり死へと誘われてしまう。
その名称や特徴から、ギリシャ神話の「セイレーン」から派生したものであるとも見られている。

 

スヴァローグ(Svarog/Сварог)

「輝き、清い」といった意味の名を持つ太陽神。同時に火の精霊、或いは空の神としても見られる。
古のスラブ神話においては、主神ペルン、太陽神ダジボーグと並び三柱(トリグラフ)の1人と位置付けられる。

火に介在する”生み出す”力を持つことから、鍛冶の神としても信仰されていた。
また、深い溝を作る力を以て、「あの世とこの世を切り離す」事ができるとされている。

 

スヴェントビット(Sventovit/Святовит)

西スラブにおける軍神。スヴャトヴィト、スヴァントヴィトとも。
「神々の神」と呼ばれ、西スラブ人にとっての最高神だったという説もある。

年に1度、酒の量を確認する事でその年の農作物の行方を占うことから、豊穣の神であったとも考えられていた。
かつて、リューゲン島北端にあった神殿では8mもの高さを誇るスヴェントビットの神像が祀られており、四方を向いた4つの顔はそれぞれ、東西南北の支配を象徴するものとされる。

 

ペルン(Perun/Перун)

スラブ神話における雷を司る神。
名前の由来となった「Perunъ」はスラブ語で「雷で打つ」を意味する言葉であるとされる。

民間伝承においては、雷で悪魔を追い立てる者として描かれたり、ヴォーロスのライバルとしてしばしば描かれる。

 

モコッシュ(Mokosh/Мокошь)

スラヴ神話の女神。モコシとも。名前の由来は、ロシア語で「潤った」を意味する「Мокошь」から。
湿潤を司ることから、大地、水、豊穣の神であるとされ、本来はスラヴ神話における大母神と称えられていた。

大きな頭を持ち、細長い腕を天に向けたような姿をしていたとされ、これは天と大地の仲介者として雨を降らせて田畑を潤したり、家畜の多産をもたらしたことを表している。

 

ヴェーレス(Veles/Велес)

地球、家畜、冥界の神。ヴォーロスとも。スラブ神話の中心となる神の一人で、雷神ペルンの敵対者。
ロシア語で「毛髪」を意味する言葉”volos”に似た名前であることから、熊と関係する獣の姿をした神とされたという説もある。別の説では、家畜を貪り食う蛇の姿をしているとも。

「原初年代記」では”家畜”の神とされており、これは人々にとって家畜は重要な財産であった事からと言われる。
財宝や豊穣を司る豊かさの象徴として祀られていた。

 

ヤロビート(Jarovit/Яровит)

西スラブのバルト海における戦争の男性神。ヤロヴィトとも。
古代ローマの軍神マルスや、ギリシャ神話の戦いの神アレスと同一視される。

スラブ神話の神の1柱「ヤリーロ」(Ярило)と同一起源と考えられていることから、春の豊穣や生殖を司る神としても知られ、地球の緑と果物を統治しているとされている。

 

セマルグル(Semargl/Симаргл)

スラヴ神話に登場する神。モコッシュと同一視されることも。
ペルシア語の聖なる鳥「シームルグ」(Simurg)を名前の由来とする説から、犬と鳥の特徴を併せ持ったグリフォンのような容姿で描かれる。

半神のキャラクターであることから天界と地上界を繋ぐ”メッセンジャー”であると考えられていたり、名前の意味を「七つの頭」と解し、スラヴ神の六柱と統合した「七柱神」という存在で表現される場合もある。

 

ボロトニック(Bolotnik/боло́тник)

スラブ神話における沼地の男性の精霊。スワンプマン。キキーモラや水の精霊ルサールカと同一視される場合も。
名称は「沼」を意味する「bolot」に由来し、カエルの目、緑の髭、長い髪を持つ老人で、身体は土や藻、魚の鱗で覆われている。

沼の底でじっと座っており、他の水の精霊のように近付いたものを誘惑して沼の中へと引きずり込む。
独身であったり、妻帯者であったりと伝説ごとに設定が異なり、後者の場合は「沼地の魔女」ボロトニツァを伴侶と描写する場合もある。

 

ストリボック(Stribog/Стрибог)

スラブ神話における風の神。ストリボーグとも。
名称の語源はインド・ヨーロッパ語の「dievas-pater」(空の父)と言う言葉に遡る。

「イーゴリ軍記」によれば、”風や大気、天候を司る神である”、ということ以外、詳細はほとんど分かっていない神とされる。
「原書年代記」ではペルン、ホルス、ダジボーグ、セマルグル、モコッシュといった神々と合わせて6柱とされ、人々によって作られた木像が崇拝されていた。

 

ボロヴィック(Bolovik/Борови́к)

「針葉樹の森のキノコ」の意を持つ森の精霊。名称の「Борови́к」は狭義において、キノコの一種であるポルチーニ(ヤマドリタケ)のことを指す単語。

ポーランドの民間伝承においてはゴブリンと同一視される場合もあり、神話毎に様々な姿で描かれる。多くの場合、人間に対して害を及ぼしたり、不幸をもたらすような存在であったりと悪いイメージであることが多い。

『Catmaze』作中では巨大なキノコの姿で登場し、キキーモラに一途な想いを寄せている描写が見られる。

 

キキーモラ(Kikimora/кики́мора)

スラヴに伝わる謎の多い精霊。キキモラとも。名前の由来については非常に多くの説が挙げられる。

他人からは姿が見えない状態で人家の中に棲み、夜になると悪戯を仕掛ける。
キキーモラの出現は、家が「不潔」で「危険」であることの兆候と考えられていた。

働き者で紡織や裁縫を好み、糸車を使った織物や縫物を行うが、怠け者な女の子を嘲るとの説もある。
働き者の味方とされる一方で、怠惰な人間に対しては危害を加える存在とされるなど、地域によって見方が異なる。
キキーモラの外見についても地域ごとに様々で、ボロ布に身を包んだ背中の曲がった醜悪な老婦人、もしくは狼の顔、白鳥の嘴、熊の身体、鶏の足、ボルゾイの尾を持つというのが一般的なものとして知られている。

不幸な子供の死霊がキキーモラになるという伝説もあり、イゴシュ等の他の悪霊と共通した点が見られる。
スラブ伝承においては、時代を経て研究が進んだことが要因で、多くの存在と同一視されることもある。

 

イゴッシュ(Igosha/Игоша)

洗礼を受ける前に死亡した、もしくは死産した嬰児の霊。イゴシュ、イゴシャとも。
腕や脚がない不完全な姿をした異常者であるとされる。

イゴッシュは埋葬地や家の中で他者の目には見えない姿で生き続けており、夜になると小屋の周りを徘徊して悪戯をすると言われている。

 

チェルノボーグ(Chernobog/Чернобог)

「黒い神」を意味する名を持つ、スラブ神話の死神。善神ベロボーグと対を成す者として伝えられる。
死や破壊を司る悪神、或いは冥府の神として捉えられることが多い。

スラヴ地域の創世神話では、白き神ベロボーグと黒き神チェルノボーグの2神が水底の沼から世界を創り上げ、その後両者の対立を経てチェルノボーグは地上へと落ち、邪霊に身を変えたとされている。
ゾロアスター教におけるアフラ・マズダとアンリ・マンユの対立と比較される場合もある。

 

レサブカ(Lesavki/Лесавки)

森の小さな精霊。ハリネズミに似た老人、もしくは女性のような容姿を持つ。レサブキとも。

陽気で気楽な性格をしており、落ち葉の中を住まいとしながら森の中で暮らしている。
乾いた葉を持ち上げて音を立てたり、集団で輪になって踊ったりして冬眠が始まるまでの期間を過ごす。

別のスラヴ神話ではゴブリンとキキーモラの子供といった存在として描かれ、彼らは森を訪れる旅人に対して悪戯をするとされている。

 

ナーヴ(Nav/Навь)

スラブ神話での世界観における、3つの世界の内の1つ。

暗黒の神々の住処”を意味する「ナーヴ」は冥界、死後の世界とも同一視される場所で、異なる法則に従って存在する別の宇宙でもある。

 

ヤーヴ(Yav/Явь)

スラブ神話での世界観における、3つの世界の内の1つ。「ヤーヴ」とは、当たり前の地上の世界、人の世界を指す。

3つの世界はそれぞれ「支配」(プラヴ/правь)、「現実」(ヤヴ/Явь)、「確率」(ナヴ/навь)の3つから成る。

 

キャット・ベイン(Kot Bayn/Кот Баюн)

スラブ伝奇に登場する魔法の声を持つ猫。名称の「Баюн」は「語り手」を意味する言葉。キャット・バユンとも。Catmaze作中ではマスター・ベインとして登場。

近付いてくる旅人を会話や歌で眠りへと誘い、抗えなかった者達に対し鉄の爪で無情にもその命を奪う。
一方で、キャット・ベインを捕まえることが出来た者には癒しが与えられ、あらゆる病から救済されるとされる。

 

リオ(Likho/Лихо)

スラブのおとぎ話に登場する、邪悪な運命や不幸が具現化したもの。リホ、リコとも。
名称である「Лихо」と言う言葉は、ウクライナ語で「不運」を意味する。
黒い服を纏った単眼で痩せた老婦人という姿で描かれることが多い。

子供を怖がらせるための迷信として扱われることが多い存在で、内容としては「リオは他人を騙し、首にしがみ付いてそのまま相手を殺害したり喰らったりする」、といったものである。

 

マーラ(Mara/Ма́ра)

スラブ神話における幽霊。名前の由来は、「悪夢」を意味する「Ма́ра」が語源。
その名が示す通り、人を破滅へと向かわせる悪霊であり、そこに至るまでの経緯は言語圏毎にさまざま。

ヨーロッパの神話においては夜に現れて、眠っている者に悪夢を見せて死へと至らせる。
ロシアにおいては見えないヴェールで目を覆い、道から外れさせて危険な場所へと誘う、など。
一部の地域では、女性の姿で描かれる場合もある。

 

 

参考出典(出典先の記述より一部を要約、及び引用)

Wikipedia (日) | Википедия | Bestiary.us | древнерусский словарик

ドモヴォーイ | ドモヴォーイ – Wikipedia
シリン | Sirin – Wikipedia(独)
スヴァローグ | スヴァローグ – Wikipedia
スヴェントビット | スヴェントヴィト – Wikipedia
ペルン | ペルーン – Wikipedia
モコッシュ | モコシ – Wikipedia
ヴェーレス | ヴォーロス – Wikipedia
ヤロビート | ヤリーロ – Wikipedia / Яровит – Википедия
セマルグル | Симаргл – Википедии
ボロトニック | Болотник (мифология) – Википедия
ストリボック | ストリボーグ – Wikipedia
ボロヴィック | Лесные духи в польской мифологии – Википедия
キキーモラ | Кикимора – Википедии
イゴシャ | Игоша | Bestiary.us
チェルノボーグ | チェルノボグ – wikipedia / Чернобог – Википедии
レサブカ | Лесавки – древнерусский словарик
ナーヴ,ヤーヴ | Явь, правь и навь – Википедия
キャット・ベイン | Кот Баюн | Bestiary.us
リオ | Лихо – Википедия
マーラ | Мара (мифология) – Википедия

 

 

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