2022 Ice.Cold.Blood
はじめに ― Game of the Monthについて
欧州ゲームコンソール『Evercade』シリーズ本体購入者用プログラム「Game of the Month」より、今回は2024年度Game of the Month11月対象タイトル「Batty Zabella」の紹介、そしてゲームプレイを終えての雑感を綴ってまいります。
普段から投稿しているゲーム感想の記事と内容面での大きな違いはありませんが、見出しなど一部構成が少し異なります。
また、この「Game of the Monthレビュー」シリーズでは紹介タイトル毎のスコア評は設けていません。併せてご了承下さい。
Evercade VS、及びGame of the Monthプログラムの詳細については以下の特集ページをご覧下さい。
@2021 Copylight Blaze Entertainment Ltd. (※2024年12月31日一部追記) はじめに 前後編でお届けしている「Ever[…]
基本情報
タイトル | Batty Zabella |
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販売/開発 | Ice.Cold.Blood |
発売年 | 2023年(Gameboy、他) |
プレイ人数 | 1 player |
備考 | The Retro Room公式サイトでは、非公式のGameboy用ソフトとしてカートリッジ版が販売中。 |
作品概要
「Batty Zabella」はカナダ・ハリファクス出身のKyle Sharpe氏を中心に、ゲームボーイソフト開発を行うディベロッパーIce.Cold.Bloodによって製作されたゲーム作品。
ゲーム内容はポイント&クリックスタイルの探索型アドベンチャー。コウモリ族(外見は人の姿)の妖艶な女性バティ=ザベラと共に、消息を絶った彼女の家族の行方を探るのが本編の目的だ。
ディベロッパーが得意としているプラットフォームからゲームボーイ用タイトルとして開発された作品で、The Retro RoomパブリッシングによるGBカートリッジ版が同メーカーウェブサイト内の商品ページにて取り扱われている。開発者のitch.ioページでは、ブラウザ上でプレイ可能なデモ版も公開中だ。
リンク:Ice.Cold.Blood(X(Twitter))
プロローグ
(※ゲーム内プロローグ部分より要約)
夫・ハズバーノが失踪してから2週間が過ぎた。
寂しくはあるが、辛うじて持ちこたえることはできている。
だが、ここ最近じわじわと周囲の空気が重く、冷たくなりつつあった。 何か不吉なことが起こっているのではないか― 私は、そんな不安を隠せずにはいられなかったのだ。 |
操作方法
(※Evercade版)
VS Controller | |
D-パッド | カーソルの移動、選択 |
Aボタン | キャンセル |
Bボタン | 調べる/インタラクト/決定/テキストを進める |
Xボタン | — |
Yボタン | — |
L1ボタン | — |
R1ボタン | — |
L2ボタン | — |
R2ボタン | — |
STARTボタン | インベントリメニューの開閉 |
SELECTボタン | マップメニューの開閉 |
※本作ではHOMEボタンメニューの使用が可能
ゲームの概要
概要にて紹介した通り、基本的な進め方はポイント&クリックによる調査と邸内の移動の繰り返し。コマンド要素は一切排されており、ゲーム内のコントロールはカーソル操作とボタン決定の2つのアクションのみで補われている形だ。
各ポイントを調べる毎に、場面に適したバティ婦人のコメントがプレイヤーへと返ってくる。エリアを移動したい場合は、画面上に映る景色の中で扉や壁などにカーソルを直接指定して決定。画面下部に🔃マークがある場合は、これをカーソル指定することで、現在いる部屋の視点を後方へと切り替えることができる。
自室の部屋のベッドを通して進捗状況の保存を行うことができる。また、こうした作中の休憩可能なポイントではセーブ実行の有無に関わらず、失った体力の全快を図ることも可能だ。Evercade版の場合は本体のステートセーブ&ロード機能が利用可能なので、場合によってはこちらの方がお世話になる事が多いかもしれない。
STARTボタンで所持品インベントリを展開。アイテムスロットは合計3枠で、その内の1つは初期から所持している愛用のヘアピンによって固定枠として埋められており、結果一度に最大で2つまでしか持ち歩くことができない。といっても、作中で手に入るキーアイテムは進行毎に順次消費していくため、「これ以上持てない」といった場面に突き当たることはない。
キーアイテムの入手方法は特定箇所に現れる光るポイントを調べること。作中の各種アイテムは持っているだけで必要な場面で自動的に使用、及び消費する仕組みとなっており、手に入れたものの使う場面がわからない、といった悩みは皆無。
調査中、時に悪意を持った存在が登場して行く手を阻むことも。彼らに立ち向かう場合は、バティ婦人が愛用するヘアピンが有用な武器となる。ただしそのままでは効力を発揮せず、屋敷の中にある石像を通して精霊の力を宿す必要がある。この力は時間経過と共に消えてしまうので、定期的に補充に行かなくてはならない。
敵となる存在と対峙した際に無抵抗のままでいると、時間経過と共に攻撃を食らってしまい、画面左にあるバティ婦人の肖像にもその変化が表れてダメージ状態が顕著となる。
抵抗手段を持っていない場合は速やかにその場を離れるのが望ましい、そうでなければ待っているのはゲームオーバーだ。
プレイ後の感想
コウモリ族の婦人バティ・ザベラは、長らく家を空けて帰ってこない夫ハズバーノの帰りを待ちながら、長年自室に籠りっぱなしの息子バット・サンの面倒を看る日々。
ある日、バット・サンが使用しているウォークマンが動かなくなるというトラブルが発生。部屋から出る気配のない愛息に代わり、バティはバッテリーを保管してある地下室へと向かうのだが…―
「Batty Zabella」は、ホラーコメディとしてのテイストを持った80~90年代スタイルの古典的なアドベンチャーゲームだ。
デモ版でプレイ可能な範囲にあたる上述の導入部パートを経て、本編はここから本格的な探索へと移行していく。
プレイ時間にして1~2時間程度でクリア可能な短編アドベンチャーと言ったところだが、ゲームデザインがシンプル且つコンパクトな分、手堅い作りで遊び易いのが好感触。
モンスター色の強い世界観に伴いホラー要素を含むものの若干コメディ寄りな作風で、インタラクトを起こすポイント次第ではバティ婦人のウィットに富んだツッコミが飛び出すこともある。
海外産タイトルに付き、言うまでもなくテキストの方は全編英文となっているが1ページ辺りの文章量は極めて少なく、現代のSNSやブラウザ上に搭載された各種翻訳機能を駆使すれば比較的簡単に物語を追い易い。
当記事では極力掲載を抑えてはいるが、作中ではサービスショット的な要素としてザベラ婦人のセクシーさを強調するようなカットが多く見られる。今回紹介しているEvercade版では家庭用コンソールマシンであることを考慮してか、一部の場面ではitch.io版に比べて少しマイルドな表現へと変更が成されている。
作中のキャラクターデザインは西洋的なテイストのタッチにつき、現代日本においての一般的なキャラクタービジュアルに関するニーズとは必ずしも合致するものとは言い難いところだが、もし本作を遊ぶ機会がある際には一応気を付けて頂きたいポイントである。
プレイ中において、少々不便なのが悪霊達と戦う武器にあたるアイテム・ヘアピンの仕様だ。
概要でも紹介した通り、このアイテムはただ持っているだけでは効果を発揮せず、2階の祭壇部屋に設置された石像から精霊の力を引き出さない事には邸内に蔓延る魔の存在達と戦うことができない。
効力は時間経過と共に消失してしまうため、力を宿したい場合はその都度部屋に赴く必要があったりとちょっとした手間が伴う。
ただし、作中に登場する彼らのほとんどは野良扱いのため、一体一体丁寧に潰さずとも大半は任意でスルーしてゲームを進めることが可能となっている。
上記を踏まえた上で一切の無駄を排したゲームプレイを突き詰めた場合、ヘアピンの真価が見られる場面自体にほとんど遭遇しないまま物語を終えてしまう事も一応は可能だ。
最も、綿密な進行ルートを持って攻略に臨ませるようなガチガチなゲームデザインであるよりは、これ位自由度が高い方がのんびりと楽しみたい派としては返ってありがたい。
4色カラー&ピクセルグラフィックによるGB風の古典的なアドベンチャーゲームという今作のスタイルは、取り分け90年代頃の家庭用ゲームコンソールを嗜んできた世代のゲームプレイヤーであれば親しみ易い方も多いだろう。
特に、本作「Batty Zabella」はかつての米ソフトメーカーであるICOM Simulationsが手掛けたアドベンチャーゲーム「De Javu」、「Shadowgate」、「Uninvited」等の影響を強く受けていると見られる。
日本国内においては「ディジャブ」、「シャドウゲイト」、「悪魔の招待状」の各タイトルでファミリーコンピュータやゲームボーイ等のプラットフォームに移植、販売経歴のあるタイトル群で、ケムコADV三部作として知られる。上記のいずれかをプレイしたことがある諸氏であれば、D-Padによる本作のカーソル操作にはノスタルジックな感覚を呼び起こすはずだ。
本作は2024年11月のGame of the Month対象タイトルということで、残念ながら本記事の執筆次点で既に配信期間は終了となっている。
Game of The Monthに選ばれるタイトルは各年度ごとに玉石混淆といった印象が強いが、本作はその中でも限りなくクセが少なく遊び易い作品に分類されると言っていい。
2025年2月発売を予定しているEvercade用カートリッジ「Indie Heroes Collection 4」に収録が決定しているので、今後、Evercadeを介して本作を遊んでみたいという方はこちらの発売をチェックしておこう。
なお、上でも触れているが本作はitch.ioの製品ページでデモ版をプレイすることが可能となっているので、雰囲気を掴みたいという方はまずはこちらから触ってみるといいだろう。