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基本情報
タイトル | 悪夢の妖怪村 |
対応機種 | Nintendo Switch |
販売 | ソニックパワード |
開発 | 同上 |
発売日 | 2021年8月19日 |
対応言語 | 日本語 |
備考 | CEROレーティング:C(15歳以上対象)(暴力)
原作は鳥井架南子氏が1985年に刊行した同名ゲームブック |
作品概要
「悪夢の妖怪村」はソニックパワードが開発、販売を行うゲーム作品。
ゲーム内容はテキストスタイルのデジタルゲームブックで、現代のコンソールにおいては少々珍しいジャンルとなる。
原作は1985年に祥伝社より刊行されたゲームブック「悪夢シリーズ」の同名作品で、2016年には幻想迷宮書店より電子書籍としての配信も行われている。著者、鳥井架南子氏のセンスが光るテキストと、その描写による妖怪村の独特な世界観は見所。
本作を基にしたコンピューターゲーム版が2011年にニンテンドーDSiに専用タイトルとして登場(※現在はDSiストアのサービス停止に伴い、配信は終了している)。書籍版の内容をそのままゲームへと落とし込んだものとなっている。今回紹介するNintendo Switch版は、このニンテンドーDSi版が元となった現代リマスター版となる。
ストーリー
(※公式サイトより引用)
「君」が高価なビデオカメラを手に入れたことが、悪夢の始まりだった。 珍しい映像を収め、テレビ局に売って儲けようなどと企ててしまったのだ。
妖怪の棲みつく恐ろしい廃村の噂を聞きつけたのは、ちょうどその頃だった。 これまでに何人か出かけて行ったそうだが、帰ってきたという話は聞かない。
金儲けに目の眩んだ君は、無謀にも単身その廃村に乗り込んでいった。
『妖怪村』と呼ばれているその村へと…。
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操作方法
(※Nintendo Switch版)
JOY-CON(左) | |
上下左右ボタン | 項目、選択肢を選ぶ |
Lスティック | |
Lボタン | |
ZLボタン | |
-ボタン | ポーズメニュー |
JOY-CON(右) | |
Rスティック | |
Aボタン | テキストを進める |
Bボタン | キャンセル |
Yボタン | |
Xボタン | |
Rボタン | |
ZRボタン | |
+ボタン | メニュー |
ゲームシステム
運命数とバイオリズム数について
【※『プロローグ』、あるいは『本編』からゲームを開始した際に必要となる工程です】
妖怪村での冒険を始めるに辺り、プレイヤーである「君」のパラメーターを決定することになる。まずは、あみだくじを使った選択型方式で、「一」~「九」の範囲の中から「運命数」を決定。
ここに、ゲーム開始時に設定した“ゲームプレイ開始時の日数と運命数の和”によって算出される「バイオリズム数」の2種類のパラメーターが、作中の随所で重要な分岐をもたらす形となっていく。
【バイオリズム数の計算例】
例)あみだくじによって決定された『運命数』のパラメーター値が”三”で、ゲームプレイの開始日(現実の日数)が”10月15日”。 この場合の計算式は「3+15」となり、バイオリズム数は“十八”となる。 |
一度確定した「運命数」及び「バイオリズム数」は、同じチャレンジ内での変動は一切行われない。新たな組み合わせを試したい場合は、新しい冒険を始める必要がある。
開始ポイントについて
この2種類のパラメーター値は、本編内の様々な場面でプレイヤーの運命を左右するものとなる。上手く噛みあわなければ、バッドエンドへ直行といったことも少なくない。
ただし、ゲームがある程度進行すると、新規プレイ時の開始地点として「コンビニ前」が選べるようになり、これを選んでゲームを始める際に運命数を自由に設定することができるようになる。
最良のエンディングをどうしても見たい、というプレイヤーは各種ヒントと併せて有効的に活用していこう。
選択肢分岐/パラグラフの移動
ゲーム版「悪夢の妖怪村」では原作版であるゲームブックの形式に則り、パラグラフ(段落)移動式のシステムがそのまま採用されている。
要所に登場する分岐シーンでは各選択肢を選ぶことで、テキストの下に漢数字で記されたパラグラフへと移動。(※上画像の場合は「八一へ」の部分に該当」
所有アイテム
Xボタンでリュックを確認して、所持中のアイテムを確認することができる。(※リュックを所持していない場合、このメニューは使用できない)
ゲーム開始時点の「君」の所持アイテムは以下の通り。
リュック(失った場合、所持金を除いた全てのアイテムが利用不可になる)
・水 ・野菜サンド ・乾パン ・サーチライト ・予備のビデオテープ 所持金(3,000円) 筆記用具(アイテムとしては扱われません) |
妖怪から逃げる、竪穴に落ちるなどのトラブル時にリュックを失うことがあり、回収するまでの間は、所持金以外のすべてのアイテムが使用できなくなってしまう点に注意。
💡ヒント
「アイテム」メニュー上では、各アイテムの選択中にAボタンを押すことで直接使用する事ができる。
ただし、使えるアイテムと場面は作中内であらかじめ決められており、その点を除くと基本的には出番のない機能でもある。
もしも、脱出への手がかりが掴めず、行き詰まってしまったという時には、この機能のことを思い出してみよう。
ビデオカメラ
ビデオカメラ、及びビデオテープを所持している際に、妖怪に遭遇すると、彼らの姿を映像画として収めることができる。
Xボタンメニューの「ビデオカメラ」では、冒険内で撮影した妖怪の名前をチェックできるが、このメニューからは撮影画像をじっくり見たりする事はできない。
一度でも撮影した妖怪の映像を確認したいという場合は、タイトルメニューの「妖怪図鑑」からチェックしてみよう。
プレイ後の感想
1985年作のゲームブックをベースに、コンソールプラットフォーム向けのコンピューターゲームとして生まれ変わった本作「悪夢の妖怪村」。
コンピュータゲーム版ならではのインターフェースや機能の追加によって、実際のゲームブックとはほんの少しプレイ感覚が異なる部分もあるが、内容的には遊び方やルールも含めて特に大きな変化もなく、原作版に留まらず、この手の書籍を過去に1冊でも嗜んだことがある(あるいは本作以前にリリースされたニンテンドーDSi版の)経験者にとっては、その造りも含めて懐かしさを感じられるだろう。
また、本作はテキストサイズが標準設定時でもかなり大きめで、文字がハッキリと読みやすい点は好印象となる要素の1つとして挙げたいポイントだ。(本作の文字の大きさ設定は最大4段階で、最高は「特大」。)
近年のテレビや液晶モニター製品の大型化、FULL HDや4Kといった規格の台頭による全体的な高解像度化の影響で、画面サイズ次第では「字幕が非常に小さい」といったゲーム作品は今日では珍しくないが、この仕様は大変に有難い。
本編では妖怪ファンにはお馴染みの顔ぶれが続々と登場。冒頭の道案内役である某妖怪に至っては、その元ネタは往年の某バラエティ番組内で生まれたキャラクターだったりと、この節操なく入り混じったごった煮感は、正しく80年代ならではなノリを感じさせるものだ。
そんな「悪夢の妖怪村」の摩訶不思議な世界観を彩るのが鳥井架南子氏が手掛けるテキスト。ホラーを題材にしつつも、妖怪とのやり取りにはどこかゆるさをも感じさせるといった、”80年代ならではの大らかな空気”を纏った独特の心地良さがある。ゲームプレイ中、随所でページ左側に効果的に挿入される美麗な挿絵も、作中イメージを膨らませる上で一役買っており雰囲気を盛り上げてくれる。
日本においてのゲームブック界隈は1980年代のブームをピークに以後は大きく目立った動きはないものの、2021年には「火吹山の魔法使い」共著者の全面協力による「ファイティングファンタジー」シリーズのボックス版刊行が行われるなど、メディア形態としては今でも一部の間から根強い支持を持つ様相を見せている。
そんな「悪夢の妖怪村」の本編は、運命数、バイオリズム数といったパラメーターや奇数、偶数によって直後の展開が大きく左右される要素が要所で登場する上に、選択を誤ればバッドエンド直行、といった往年のゲームブックらしいシビアなバランスも手伝って、一度目や二度目のプレイで必ずしも順調に進められるとは限らない。
逆に言えば、運命を分ける奇数、偶数判定やイベントが発生するポイントは全て確立された造りであるため、攻略法を熟知しているのであれば簡単に辿り着くことはできる。そこまでの過程を楽しむのが本作を最も楽しむことができる期間となるだろう。
こういった点を踏まえた上で、本作の真っ当な攻略法は、数々のバッドエンドを迎えながら繰り返し挑戦し、随時解放されるヒントメモを頼りに、妖怪との交渉、重要なアイテムの入手、など抑えるべきポイントを抑え、村からの脱出に向けて道を少しずつ切り拓いていく、といったものになっている。
ある程度の場面まで到達することができれば、以降、特定の進行地点からのゲーム開始が可能となるため、本編をグッドエンドで結末を迎えたいだけであればそこまでの敷居はグッと下がる。
反面、妖怪図鑑やエンディングの収集については、一部の対象キャラとの出会い方が特殊な条件下のみ可能だったり、普段なら試さないような選択肢も意図的に選んでみなくてはならなかったりと、ノーヒントでは少々難しいと感じる場合もあるだろう。
“ゲームブック”といった媒体に触れたことがない、という方にとっては、その仕組みやルールを知る上での入門用に最適。勿論、原作ファンであるというSwitchユーザーにも本作はおススメできる一本だ。
ノスタルジックな魅力を持った”観て操作するデジタルゲームブック”、Nintendo Switch版「悪夢の妖怪村」を是非お試しあれ。
評価
個人的スコア(10点満点中) | 7.5 |
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良い点
- 元来のゲームブックの仕様に忠実な、パラグラフ(段落)巡回式のゲームデザイン
- 80年代テイスト全開の、鳥井架南子氏の著作によるノスタルジックなテキスト
- 単なるホラー作品に留まらない、本編の摩訶不思議な世界観
惜しい点
- エンディングを収集する場合はかなり手間がかかる
- ゲーム的な演出はかなりサッパリしており、そういった要素を省いて考えた場合、本編自体はそこまで長くない
- 攻略法が確立されている一方で、運命数などの要素は余り重要な場面では絡んでこない
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