©2020 Microids SA. All rights reserved. Published by Microids. Developed by Artefacts Studio and Tower Five. All rights reserved.
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The AGATHA CHRISTIE word mark and signature and POIROT are registered trade marks of Agatha Christie Limited in the UK and/or elsewhere. All rights reserved.
基本情報
タイトル | Agatha Christie – The ABC Murders |
対応機種 | Steam/Nintendo Switch |
販売 | Microids |
開発 | Artefacts Studio, Tower Five |
発売日 | 2016年2月4日(Steam版)/2020年12月17日(Switch版) |
対応言語 | 日本語,英語,フランス語,ドイツ語,イタリア語,スペイン語,ポルトガル語,ロシア語 |
備考 | IARCレーティング:12+(軽い暴力) |
作品概要
「Agatha Christie – The ABC Murders」(Nintendo Switch国内版タイトルは「アガサ・クリスティ作 『ABC殺人事件』」表記)はフランスのゲーム開発チームArtefacts Studio, およびTower Fiveの共同開発によるゲーム作品。販売はMicroidsが担当。
英国の推理作家アガサ・クリスティによる1936年*発表の同名作をモデルとしたゲーム作品で、名探偵エルキュール・ポアロが難事件に挑んでいく推理型ミステリーアドベンチャーだ。
トゥーンレンダリングによって描かれた特徴的なキャラクタービジュアルと、プレイヤーの取った選択が如何にポアロらしいものであるかを測定する「エゴポイント」は本作を象徴するゲーム要素となっている。
(*イギリスでの公開年度は1936年だが、アメリカではその前年である1935年11月に簡略版が公開となった)
登場人物
被害者、容疑者を除く、主要人物を紹介。
(各人物の紹介文については、基本的にwikipediaより一部を引用、もしくは要約しています)
エルキュール・ポアロ |
ベルギー出身の私立探偵。はねた口髭が特徴的な背丈162.5cmの小柄な男性。
心理分析と物証を組み合わせた捜査法を得意とする。 「ABC」と名乗る人物からの手紙を下に、アンドーヴァーのタバコ屋で発生した殺人事件の調査へと向かう |
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アーサー・ヘイスティングズ |
ポアロの友人で、元軍人。階級は大尉。
真面目で正義感に溢れ、女性に優しい典型的な英国紳士。 シリーズ作中では事件の記録者としての役割を持ち、事件の捜査ではポアロと行動を共にする事が多い |
ジェームス・ジャップ |
ロンドン警視庁(スコットランド・ヤード)の主任警部。
私立探偵という存在を疎ましく思っているが、ポアロとは旧知の間柄。 ただし、事件の際にはいつもポアロに先を越されたりしている。 趣味は野草の観察。 |
操作方法
(※Nintendo Switch版)
JOY-CON(左) | |
Lスティック | 移動 |
上ボタン | 手がかりのメニューを開く |
下ボタン | 同上 |
左ボタン | 同上 |
右ボタン | 同上 |
Lボタン | 【オプション画面】タブの切り替え |
ZLボタン | 【観察画面】インタラクト |
-ボタン | メニューを開く/閉じる |
JOY-CON(右) | |
Rスティック | カーソルの移動 |
Aボタン | 選択項目の決定、【インタラクト】話しかける |
Bボタン | キャンセル |
Yボタン | |
Xボタン | 【インタラクト】調べる |
Rボタン | 【オプション画面】タブの切り替え |
ZRボタン | |
+ボタン | ポーズメニュー |
上記は基本的な操作で、この他にも「特定の物を動かす、引っ張る」(ZL+Rスティック)のような、ボタンとスティックを組み合わせた応用型の操作も一部の場面で登場する。
ゲームシステム
ゲームの進め方
本編はテレビドラマのように登場人物たちがフルボイスで会話を繰り広げるカットシーンと、プレイヤーが実際に操作を行う調査パートが交互に展開していく。
全4章で構成された本編で、果たしてポアロとヘイスティングズは事件の真相を暴くことができるだろうか?
プロファイル
いわゆるセーブデータにあたる「プロファイル」は、最大3つまで作成が可能。
主に、事件(本編ストーリー)の進行度や獲得したエゴポイントがプロファイル毎に記録される。
違うプロファイルを使ってプレイしたい場合は、あらかじめ本編スタート前に切り替えておく必要があるので、起動後に行っておこう。
観察/考察
特定の場面にカーソルを合わせると眼鏡のアイコンが表示されることがあり、Xボタンで詳しく調査する「観察」または「考察」モードへと移行する。
(※人物の様子を見る場合は「観察」、事件現場や物証を調べる場合は「考察」となる)
画面内に色んな場所にカーソルを当てることで、隠された情報や事件の手がかりを発見することができる。画面左に表示される数字分発見できればモード終了。
Switch版では、より手がかりに近い場所にカーソルを持っていくことで周囲の景色がぼやけ、同時にJoy-Conが強く振動するのでこれを発見のヒントとしてみよう。
エゴポイント
選択肢毎に特定の選択をすることで、エゴポイントというポイントが入ることがある。
これはプレイヤーが取った選択が”エルキュール・ポアロらしいものであったかどうか”、という指針となるもので、本編では頻繁に獲得の機会がある。
獲得ポイントの数値自体は事件の解決や評価に特には関わりはないが(※実績の解除には関わる場合がある)、ディープなポアロファン向けのシステムと言ってもいいだろう。
エゴポイントの獲得の基準はあくまでも”ポアロらしさ”であり、これはなにも事件に直接関わりのある行動だけとは限っていない。
例えば調査の際に鏡や鏡台が登場するロケーションが何度も登場するが、鏡を調べる度にポアロは髪や髭を整えるという所作を取る。これだけで+3のエゴポイントを獲得することができる(鏡毎に初回のみ。ただし、同じロケーションであっても章を跨ぐと再び判定が行われる)。
重要なのはいかにエルキュール・ポアロになりきるか、という点なので、ポイントをより多く稼ぎたいのであれば、一見無意味と思える行動でも色々と試してみよう。
灰色の小さな脳細胞
事件の調査中、ここまでに手に入れた手がかりや情報を基に、ポアロが事件の整理を行う「灰色の小さな脳細胞」パートが度々登場する。
(※設問毎に正解を導き出せるだけの手がかりが揃った段階で自然と登場)
内容としては、1~3つの設問が順に登場するので、問いに対する適切な手掛かりを下段に用意されたものの中から選び、「?」のパネルに必要分嵌めていくといったもの。
正解の組み合わせになるまで、ペナルティ無しで何度でも組み換えができるので、色々と試してみよう。
捜査に行き詰まった時は?
もしも、捜査に行き詰ったときは+ボタンでポーズメニューを呼び出し、「手がかりを使う」機能を惜しみなく使っていこう。
捜査中、「考察」の中にはパズル要素が含まれているものがあり、ミニゲーム色が強い反面、後半には意外と難易度が高いものも登場する。
この機能を使用することでゲームが自動で進行し、考察がパズル系の内容だった場合はポアロが一段階分自動で解いて進めてくれるといった具合だ。
ただし、一度使用するとしばらくの間は再使用できなくなってしまう。回復状況は上画像のように%表記で示されるが、再使用可能となるまでは3分程度の時間を要する。
手がかりの使用はなるべく「いくら考えてもわからない」という場面に限定するように心がけたいところだ。
プレイ後の感想
エルキュール・ポアロと聞いて筆者が真っ先に思い浮かぶのは映像作品で、中でもデヴィッド・スーシェ演じる往年の海外テレビドラマシリーズ「名探偵ポワロ」(日本放映版での吹き替えは故熊倉一雄氏が担当)や、近年、地上波でも放映されたケネス・ブラナーがポアロ役を務める劇場公開作品「オリエント急行殺人事件」(2017)の2作は未だ記憶に新しい。
製作年度、出演者、スタッフなど味わいは異なるが、両作品共に映像作品として話題性やインパクトをしっかりと残している。
そして本作「Agatha Christie – The ABC Murders」(邦題「アガサ・クリスティ作『ABC殺人事件』」)だが、これは原作の雰囲気を重視した丁寧な作りとなっている事は少し触ってみるだけでもプレイヤーへと伝わってくる。
既に翻訳版が何度も登場しているクラシック小説が原作だけに、ローカライズ面における懸念はあまりないという点で安心感がある。実際、プレイ中はごく数点の誤字脱字こそ見かけたものの、文章が破綻しているような箇所は一切見当たらなかった。
一方で、ゲームプレイの快適度に関しては、気になる箇所が何点か見られた。
まずは、移動が伴うパートでのポアロの歩行速度について。本作には名探偵にして紳士でもあるエルキュール・ポアロというキャラクター像を崩さないためか、ダッシュ移動のようなアクティブな行動を取る要素は搭載されていない。
速度面で不満を感じるのは場面次第なところもあるが、顕著となるのが遠景タイプのロケーションパート全体で、エリアの端から端まで移動するとそれなりの時間がかかってしまい、若干ながら苛々が募りがちだ。
また、本作の進行状況の記録についてはオートセーブのみが採用されており、且つ、手動によるセーブ&ロードは非搭載。本編はドラマのようにフルボイスで自動で進行していくため、中断した以外のところからプレイを再開、といった自由が効かない。このため、一方通行気味なプレイスタイルとなってしまうのが少々残念に感じた点だった。
本編内で度々登場する考察パズルのミニゲームに関しては、問題ごとに難易度の差が著しく、特に4章に登場するものの中には捜査が可能なエリア全体への観察力に優れていないと、問題の意味さえ計りにくいものも見られた。
もしも筆者同様、パズル型の考察で詰まった際には、あまり問題に執着しすぎずに素直に「手がかりを使う」機能を使用する事をお奨めしておきたい。
手がかりを使った場合のデメリットも特にないので、先に進めないというジレンマから解放されるためにも、惜しまず使っていく方が結果、精神的にも優しい手段となるはずだ。
ポアロを始め、登場人物達それぞれの立ち振る舞いや、殺人事件の舞台ながらも作中の雰囲気は終始穏やか。時折入るポアロとヘイスティングズ両者によるユニークな掛け合いも味わい深くて必見。
人物達の演技や演出によるドラマティックな盛り上がりを見せるような作風ではない分、全体の展開は淡々としていてサスペンスものとしては地味な方だが、著作者、シリーズ共に歴史ある推理小説作品を丸々一本忠実な形でゲームへと見事に落とし込むことに成功している。
尖がったアレンジも含めた旧作のリバイバル復刻が多い現代においては、比較的原作のイメージをしっかりと守り通してある点では実に歓迎すべき一作だ。
原作を知っている方も、知らない方も、それぞれが違う角度で楽しめる、本格推理型ミステリーアドベンチャー『Agatha Christie – The ABC Murder』を是非お試しあれ。
評価
個人的スコア(10点満点中) | 7.5 |
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良い点
- 海外ミステリー文学の雰囲気をしっかりと表現したトゥーン調のマイルドなビジュアルと、シンプルで観易いインターフェース
- 「灰色の脳細胞」、「エゴポイント」といったポアロらしさを補強する特徴的なシステム
- “プレイヤー自身による推理”が要求される、推理ミステリーアドベンチャーとして相応しい形のゲームシステム
惜しい点
- (Nintendo Switch版)Rスティック=カーソル移動という操作設計が、プレイし辛い印象を与えている
- ダッシュといった移動に関する調節要素が備わっていないため、調査の上でキャラクターの移動が伴うパートではゆったりと歩くポアロの速度に煩わしさを感じる場合も
- オートセーブの片道方式に加えて任意でのセーブ&ロード機能がなく、基本的に一度見たシーンのやり直しが効かない(※最初から始める必要がある)