弟切草 ~チュンソフト発サウンドノベルの原点作。洋館に迷い込んだカップルを待ち受ける運命は?

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(スーパーファミコン版パッケージ)

 

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©1992/2001 CHUN SOFT. ALL RIGHTS RESERVED

 

 

基本情報

 

(スーパーファミコン版)

タイトル 弟切草
対応機種 スーパーファミコン
販売/開発 チュンソフト
発売日 1992年3月7日
備考 セーブデータ数:3

 

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(PlayStationリニューアル版)

タイトル サウンドノベル・エボリューション1 弟切草 蘇生篇
対応機種 プレイステーション
販売/開発 チュンソフト/ネクセス
発売日 2001年4月12日
備考 セーブデータ数:3(※1つにつきメモリーカード1ブロック使用)

 

(※以降の画面写真は特に指定のないものを除き、いずれもスーパーファミコン版のものとなります)

 

作品概要

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テキストと効果音で物語を綴る― さながら”映像音声付の遊ぶ小説”といった「サウンドノベル」という新たなジャンルをビデオゲームにて開拓したタイトルが、チュンソフト製作のスーパーファミコン用ソフト「弟切草」だ。「特捜最前線」など数々のドラマ作品で脚本を手掛けた長坂秀佳氏による味わい深いテキストは本作の魅力の一つとなっている。

「弟切草」の原作はスーパーファミコン版で、同時にこれがチュンソフトのスーパーファミコン参入タイトル第1弾にあたる。サウンドノベルというジャンルがビデオゲームでガッシリと根付くのは後に同社が発売した「かまいたちの夜」のヒット以降の事となるが、本格的な推理ミステリーを味わえたあちらに比べて、こちらは一貫してミステリーホラーものに特化した内容となる。

後に発売された同ジャンル作品に比べて利便性などの面では劣るものの一作目にして、サウンドノベルとしての基礎は既に出来上がっていると言っていい。後年、プレイステーションでリメイク作として登場した「サウンドノベル・エボリューション1 弟切草 蘇生篇」(以下「弟切草 蘇生篇」)では、メディアが大容量のCD-ROMへと移ったことでサウンド及びビジュアル面が大きく進化。特にビジュアルについては、ドットグラフィックだったオリジナル版からVFX技術を駆使したホラー映画風ビジュアルへと生まれ変わり、視覚的な豪華さは一段と凄みを増した。

 

 

操作方法

 

(※下記はスーパーファミコン版での操作方法

十字キー 選択肢を選ぶ/(名前入力画面)文字の選択
Yボタン
Xボタン
Aボタン テキスト、ページを進める/(選択肢画面で)決定
Bボタン
Lボタン
Rボタン
STARTボタン
SELECTボタン

 

スーパーファミコン版「弟切草」では余計なボタン操作は一切なく、テキストを進めるAボタン、選択肢を選ぶ十字キーの2種類のボタン操作しか存在しない。サウンドノベルというジャンルが示す通り、本作のスタイルは映像と音声で読み進める読書ゲームなので、条件反射が必要なアクション、スポーツ的な要素や、頭を使うパズル的な要素は一切ない。普段テレビゲームをしないといったプレイヤーも取っつき易いのは良ポイントだ。

 

 

システム

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主要人物はプレイヤーの分身ともなる男子大学生の公平*とそのガールフレンドである奈美の二人組。二人は夏のある夜、山道をドライブ中にブレーキが故障するといったトラブルに見舞われた事を切っ掛けに、まるで運命に導かれるかのように寂れた一件の洋館へと迷い込む―

(*:主人公の名前はプレイヤー側で任意に変更可能。“公平”というデフォルト名が付いたのはプレイステーション版からで、この名前は以降、小説版、コミカライズ版等の各種メディア版にて共通のものとなる)

 

上記の導入部を経て2人は洋館での探索を続ける内、次第に奈美に関わる秘密が明らかになっていく— というのが物語の基本形だ。

 

選択肢

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サウンドノベルというジャンルにおいて欠かせないシステムの1つが選択肢によってストーリー分岐が発生するマルチシナリオシステムだが、同ジャンルの先駆者である「弟切草」でも勿論採用されており、テキストを読み進める内、随所で選択肢が出現する。

「弟切草」における選択肢は基本どれを選んでも正解はなく、次々に現れる選択肢をどういう組み合わせで選んだとしても最終的に複数用意された何れかのストーリーに辿り着き、きちんと完結を迎えることができる。そのため、本作にはゲームオーバーという概念はない。

ただし、プレイを重ねることで新たに登場する選択肢も多く、まだ観ていないストーリーに辿り着きたい場合は特に後半の選択肢では計画的に選んでいく必要がある。

例えさりげない内容の選択肢であっても、軽んじて適当に選んでしまった結果想定外の結末を迎えるストーリーへと分岐してしまった― といったこともしばしば起きるので、特定のエンディング狙いで選択肢を選ぶスタイルでプレイを行う場合でも、最後まで油断は禁物だ。

 

マルチストーリー展開

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洋館で巻き起こる不可解な現象の数々と遭遇する内、やがて公平と奈美の二人はこの屋敷にまつわる過去と直面することになるが、その内容と結果はこれまで選んできた選択肢によって大きく変化していく。一般的なサウンドノベルの醍醐味はまさにこの変化するストーリーにあり、繰り返しプレイして異なる選択肢を選んでみることで前回とは違った新たな展開やストーリーを体験することが出来るのが醍醐味。

公平と奈美以外にも洋館内には様々なキャラクター達は登場するが、マルチシナリオ形式によるストーリー分岐により最終的にたどり着く物語次第でその役回りも大きく変わっていく。新たに開始する毎に「前回見たストーリーではあんな役割だったキャラが、今回はこんなポジションで出るなんて…」と新たな衝撃をもって楽しむことができるだろう。

 

弟切草は一度目、二度目のプレイで全てが判明するわけではなく、それは数あるストーリーの内のほんの一部を垣間見たという事に過ぎない。新たなストーリーを楽しむ上では、前回選んだものとは異なる選択肢を率先して選んでいくのが最も近道となる。

ただし本作はゲーム開始直後の冒頭テキストのパターンからしても数種類あり、この時点で毎回最初からのプレイでも展開が微妙に異なって来る。繰り返しプレイすることで、どのシーンでどういう選択肢が出現するかというのも次第に掴めてくるようになるので、中々違うストーリー展開が見られない…という場合は選んだ選択肢や前後のテキスト等のメモを取るようにするのも一つの攻略の手引きとなるだろう。

 

ピンクのしおり

なお、基本的なストーリーを全て体験し終える(各スタッフロールの最後に「完」の文字を観る)ことで、セーブデータ選択画面のしおりの色がピンクに変化するいわゆる「ピンクのしおり」モードに突入。これは若干のお色気要素も含めて更なるシナリオが追加されたおまけモードで、このおまけはその後の同社のサウンドノベル作品における定番のものとなっている。

本編がいずれも比較的シリアスな内容だった反動かピンク~ではお色気やギャグ成分が多く含まれており、特にラストのオチは世界観崩壊も必至なほどの強烈さっぷり。これについては賛否が分かれるところだが、本モードの追加シナリオ自体おまけエピソードと割り切るのが良さそうだ。

 

プレイステーション版の追加要素

 

ザッピングシステム

ここからはプレイステーションでのリメイク版となる「弟切草 蘇生篇」での追加要素について触れていこう。

「蘇生篇」では新要素として、これまで公平オンリーだった視点に加えて特定のポイントで奈美の視点でのプレイモードへと移動できる「ザッピングシステム」(ZAP)を新たに搭載。スーパーファミコン版では一切描写がなかった奈美の視点を描くそのテキストは勿論、長坂秀佳氏の手による描き下ろし。

ザッピングというシステム自体は同社のサウンドノベル「サウンドノベル 街 -machi-」(1998年)からの起用だが、あちらと違って曜日時間などの細かいタイムテーブルが存在しない本作では特定のページ内の特定のキーワードからZAPする、といったシンプルなシステムに落ち着いている。

一旦切り替えた後は常時奈美の視点で進められる、というわけではなく特定のところまで読み進めると、自然と主人公の公平視点へとZAPを経て戻るという設計ではあるが、奈美視点は劇中、かなり多くのポイントで切り替えることができるのであらかじめスーパーファミコン版を遊びこんでいたプレイヤーならばどこに追加されているのかをじっくり調べてみるのも楽しみ方の一つとなるだろう。

 

新規選択肢、新規書き下ろしテキストの追加

また、プレイステーション版ではテキスト面でも大幅な見直しがなされており、一画面内での表示文字限界数や利用可能な漢字が拡張された事も作用し、基本的なストーリーラインはそのままにスーパーファミコン版と比べて、随所に変更が加えられている。

テキストの背景に表示される画像の方も、随所に挿入されるムービー演出同様VFX効果によるものに進化しており、原作版をさんざんプレイ済みという方でもプレイステーション版は新鮮な気持ちで臨むことができるだろう。

見直されたのはテキストだけでなく、特定の条件を満たす事で各シナリオの結末に更なる補完パートが追加されたりとプレイステーション版ならではの追加要素は実に豊富だ。同様に選択肢の方にも新たなものが多数追加されており特に「ピンクのしおり」モード解放後は、ほぼどこの分岐点でも最終的に選択肢が4つや5つへと増えている状態になるほど。

元々原作の時点でも、全編通して登場する選択肢は多めだった本作だが、上記の改変が原因でプレイステーション版では選択肢の数も異常な量へと膨れ上がってしまった。「ピンクのしおり」以降に追加される選択肢はその内容もネタ的なものが多く、ミステリアスな世界観は完全に崩壊している。前述通りおまけコンテンツ的なシナリオとなっているので、肩の力を抜いて楽しもう。

 

プレイ後の感想

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再三となるが「弟切草」はサウンドノベルというジャンルを切り開いた第一号タイトルであり、同時にアドベンチャーゲームとしても新たなタイプのものとして定着する切っ掛けを作った記念すべき一作だ。ただ文章を読み解くだけでなく、随所に挿入される画や音を五感で味わいながら本来の小説では味わえない「選択による物語の分岐」といったゲームならではのエッセンスが、上手く混ざり合って成立しているジャンルと言えるだろう。

スーパーファミコン版、プレイステーション版共にどちらも近代ハードでもダウンロード配信が行われているので現在ではそちらで購入するのが手軽な入手方法となるだろうか。サウンドノベル系の作品のプレイ経験があるけどまだ遊んだことがない、といった諸氏にとっては記念すべきタイトルとして、一度は体験して欲しい一作だ。

 

評価

(※一部を除き、スーパーファミコン版を基準にした評価

個人的スコア 8.0(10点満点中)

 

良い点

  • 選択肢分岐によって、同じ場所を舞台としながら展開が全く異なる物語と結末を味わえる
  • 本編随所でスーパーファミコン版では素朴ながらも効果的な演出を、プレイステーション版ではホラー映画さながらのVFXによるリッチな演出をそれぞれ楽しめる
  • 読み進める&選択肢を選ぶだけというごくシンプルな操作で、テレビゲーム自体に馴染みがないというプレイヤーでも取っつき易い

惜しい点

  • (※スーパーファミコン版)ジャンル開拓における最初期作品ということもあり、チャプター選択やバックログの非搭載など、近年の作品に比べてシステム周りが不十分
  • 途中までルートが固定されているように見せかけて、後半の特定の選択肢でいきなり違う物語に移行することがあったりと、急激且つ強引な物語収束の展開が起こり易い
  • (※プレイステーション版)大幅に修正したと言われるテキストだが、おまけシナリオについては手を入れ過ぎた結果、荒唐無稽な展開となっているのは賛否両論点

 

 

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