© 2014-2018 SUKEBAN GAMES CA , WolfGames / Published by PLAYISM
基本情報
タイトル | VA-11 HALL-A(ヴァルハラ) |
対応機種 | Steam/PlayStation Vita/PlayStation4/Nintendo Switch |
販売 | PLAYISM(各種コンソール版)/YSbryd Games AGM PLAYISM(Steam版) |
開発 | Sukeban Games,WolfGames |
発売日 | 2016年6月21日(Steam版)/2017年11月16日(PSVita版)/2019年2月8日(PS4版/Switch版) |
対応言語 | 日本語,英語,中国語(簡体字)(※Steam版。日本向けコンシューマ版はいずれも日本語のみの対応) |
備考 | CEROレーティング:D(17歳以上対象)(恋愛、犯罪)
ゲームジャンル名は”サイバーパンクバーテンダーアクション”。PSVita版はVitaTVでのプレイに対応 |
(※本稿で使用している画像はいずれもPlayStation Vita版のものです)
作品概要
(※2021年9月18日、加筆修正)
「Va-11 HALL-A」(ヴァルハラ)は南米ベネズエラのデベロッパー「Sukeban Games」開発のアドベンチャーゲームで、開発側が提唱するジャンル名は「サイバーパンクバーテンダーアクション」。
元々はsteamで展開していたPC向けのインディーゲーム作品だが、2018年にパブリッシャーであるPLAYISMによる国内ローカライズでPS Vita版が登場、初のコンシューマー移植版の登場となる。
コンソールでの後発版として2019年にはPlayStation4とNintendo Switch版がそれぞれ同時リリースとなった。
ゲーム内容は近未来都市”グリッチシティ”のバー「VA-11 HALL-A」(ヴァルハラ)の従業員、女性バーテンダー・ジル(フルネームはジュリアン・スティングレイ)の視点で様々な来店客との会話を挟みながら時にオーダーに倣ってカクテルを提供していく。
バーテンダーアクションというキーワードは上記の”カクテルを提供する”といった部分に因んだもので、客のオーダー通りのものを作り上げて提供するも良し、オーダーと全く異なるカクテルを提供するのもプレイヤーの自由だ。
リンク:Sukeban Games Official Webfront
ゲームの特徴
「VA-11 HALL-A」のゲームの流れを簡単に説明するとゲーム内の12月12日~31日の3週間に渡って来客のオーダーに対してプレイヤーの判断で思い思いのカクテルを提供していくというもの。プレイ中は終始ジルの視点でゲームは進行するが、従業員や来店客との日常的な会話に沿ってストーリーが展開していく。
日々の来店客との会話を挟みながらオーダーに倣ってカクテルを提供する― といった流れを日々繰り返していくことになるが、本作で提唱されているジャンル名「バーテンダーアクション」はこのカクテルを作る部分に絡んでくる。
カクテルを作るという、ビデオゲームでもあまり見慣れない題材を絡めてきてはいるが本作のカクテル作りの仕組みはシンプル。アルデハイド、カルモトリンなどあらかじめ用意されている5種類の材料を使ってレシピを参考にそれぞれ決まった比率どおりに混ぜ合わせるだけ。一般サイズを作りたい場合はレシピ通りの比率で混ぜ合わせ、大サイズを作りたい場合は2倍量で混ぜ合わせて作成、といった具合だ。
カクテル作成と提供
本作ではマルチエンディング形式がとられているが、その分岐条件として「客のオーダーにどう応えるか」というのが重要なポイントとなってくる。例えばある客から「ノンアルコールのお酒が飲みたい」といったオーダーが来た場合はカルモトリンを抑えたカクテルを提供する、といった具合に客のその時の気分に合わせた配慮が後のストーリーに異なる展開を及ぼす場合もあるのだ。
お店に通い慣れてきた客に至っては時々オーダーが「いつもの」とか「何か甘いもの」と漠然としたものになることがあり、具体的に何のカクテルが欲しいかとは言ってくれない機会も増えてくる。こういった場合はレシピをよく見てカクテルの味の傾向を掴んだ上で、その客がどういう傾向の味を好むか、あるいは何のカクテルが好きなのかを把握しておく必要が出てくる。
接客
「VA-11 HALL-A」の登場人物はその誰もが非常に個性的で、来店客の一部を取り上げてみても、幽霊と思しき少女、喋る犬、半身に改造を施したサイボーグの殺し屋、人間そっくりなドロイド(作中では「リリム」と呼ばれる)、世界五大瓶詰め脳の一人、など凡そ種族の壁を取っ払っての強烈な個性をもったキャラクターが並んでいる。
人間に至っても五体健全な人物はほぼ存在せず、事故や大病によって喪った機能の代替などを理由に身体のどこかにナノマシン手術を施しているキャラも多い。露骨な下ネタが時々見られる作中では飲酒描写を通してその上で性的な話題が飛び出すことも。特定のキャラクター間ではジェンダーレスな愛情描写も見られたりと、各々複雑な事情を持つ登場人物達の背景を知ることで、207X年のディストピアという舞台背景がほんの僅かながら伺える。
登場人物の会話劇メインで展開していく反面、舞台となるグリッチシティについては謎の部分も多い。本作の世界観をより深く楽しむ上では後述のマイルームパートで確認可能な、各種インターネット記事がその一助となるだろう。一枚絵とテキストで語るゲーム内容なためダイレクトな視覚的描写はほぼ全くと言っていいほどないが、その分不足している情報を想像で膨らませて補っていく作業が楽しいタイプの作品だと言える。
また、他パブリッシャー作品とのクロスオーバー要素としてアドベンチャーゲーム作品「2064:Read only Memories」から一部の登場人物がゲストキャラとして参加。特定の条件を満たす事で来店客として登場する。「2064:Read only Memories」はSteam版、PS4版、及びNintendoSwitch版がそれぞれダウンロード専用タイトルとして配信中。
インディーゲーム界隈において一躍ワールドワイドな人気を博した本作は本編内以外でも展開を広げ、2019年には期間限定の内外コラボ企画としてサンボーン社が運営するソーシャルゲーム「ドールズフロントライン」にてジル、デイナ、セイ、ステラなどの一部の登場キャラクターがプレイアブル参戦を果たしている(現在は該当イベントは終了)。
リザルト/マイルーム
その日の勤務を終えるとスコア決算画面になり、働きに応じた金額がそのまま懐へと入ってくる。決算画面の後はジルは自分の部屋に帰宅、同時にマイルームパートへと移る。
このパートではタブレット型と思しき端末で某匿名掲示板風のスレッドを覗いたり、ニュースサイト「オーグメントアイ」の記事などを中心にほぼ日替わりでゲーム内の情勢を知ることができる。近代的な西欧都市風の街並みを見せるグリッチシティが舞台であるにも関わらず、ジルの住まいはワンルームにこたつに猫といった何故か日本情緒溢れる雰囲気に満ちた空間に何処かくつろぎを覚える。
記事1つ1つに対してジルと愛猫のフォア(なぜかジルとは会話が成立しているという設定)同士による一言ずつの掛け合いが観られるのも見所。これらは見ても見なくてもゲーム展開には一切影響は及ぼさない要素だが、中には各登場人物が絡む内容も含まれており、目を通すことでいっそうゲーム内への関心が深まること請け合いだ。
また、本編がある程度進むと端末の項目に”ナノカモ”というものが追加される。これはカモフラージュを駆使して室内の内装デザインを変えられる内装コーディネートシステムで、こたつの布団や内壁の模様を変えられるといったもの。登場する種類こそ多くはないが気分に応じて変えてみるのも楽しみ方の一つだ。
部屋に置くものを追加したくなった時は、エルトンショップで買い物をしてみるのも良いだろう。店頭に並んでいるものはいずれも基本的には置物だが、中にはジュークボックスに曲を追加したり、ミニゲームをプレイ可能になるものも…?
グリッチシティの文化事情
256色調でまとめ上げられた本作のビジュアルは往年のPCアドベンチャーゲームを意識したグラフィックで、一見で懐かしさを感じる方も多いだろう。207X年という時代設定やサイバーパンクを強調した世界感も同ジャンルが特に人気を博していた80年代中期~後期当時のアニメ作品「バブルガム・クライシス」、「AKIRA」などの世界観を髣髴とさせ、実際元ネタからの派生だと思われるパロディも劇中でちらほら見られる。
サイバーパンク作品からに限らず本作ではジャパニメーションや日本産ゲーム作品含め新旧問わず風俗、オタク文化にまつわるパロディが随所で多々見られる。バーが舞台であるだけに作中も当然アルコール描写が絡み、そこに彩りを加えるかの如く会話の中でも下ネタがここぞとばかりに飛び出したりと、成人向け且つ強烈な味わいを見せる作風に仕上がっているが、ビジュアル面での性的な要素は実質皆無なのでその点に期待する場合はやや物足りなく感じるかもしれない。
BGMについて
本作のもう一つの魅力はGaroad musicが手掛けるオシャレなサウンドにある。ゲーム内のバーテンダーパートではジルの出勤直後と休憩上がり直後のタイミングで毎回ジュークボックスの選曲画面に入るのだが、ここでは収集済みのサウンドの中から12曲を自由に入れ替えることができる。選択が終わると入れ替えた曲順で直後のバーテンダーパートを楽しむことが出来る仕組みだ。
PS Vita版ではアレンジを含め60曲以上ものBGMが用意されており、最初から選択可能なもの以外はゲーム内で特定の条件を満たす事でそれぞれ収集可能となる。何れの曲も注目ではあるが個人的イチオシは作中でアレンジも収録されている「Every Day is Night」で、普通にプレイしているだけでも自然と耳にする機会が多く「代表曲」という印象が強い一曲だ。
作中の楽曲についてはPS Vita版店舗予約特典、PlayStation4及びNintendo Switch版の予約特典として、それぞれ16曲入りのサウンドトラックCDが付いてきた(※前者と後者で収録内容は異なる)が、それとは別に本作は元々、全世界向けにLP盤及びダウンロード版のフルアルバムが販売されており、そちらには一部アレンジ曲を除き作中のBGMが余すところなく収録されている。
2019年には、タイアップ曲を除くゲーム内の全曲が収録されたCD3枚組のコンプリート版OSTが輸入盤で発売となっている。現在、入手はやや困難となっているが音源盤を手元に置きたいというファンは要チェックだ。
プレイ後の感想
VA-11 HALL-Aを舞台に繰り広げられる人間ドラマと独特の世界観が醸し出す本作の雰囲気を肴に飲み物を味わうのも一興だ。ローカライズによる洋画吹き替えとも国産アニメとも一味違った独特のテキストによる会話劇はややクセがあり好みは別れるところだが、個性的なキャラとの相乗によって味わい深いものになっておりキャラ達の魅力を引き立てる効果も十分。
本作をニューゲームで開始した際「飲み物とおつまみを用意して、リラックスした状態でプレイしてください」という一文が添えられる。
実際肩の力を抜いて楽しむスタンスの作品である点については終始ブレはなく、あくまでもバーテンダーと来店客の間で展開していく会話劇が本作の主軸となっており、アクション的な展開は本作では一切見られない。サイバーパンクやアクションという本作ジャンル名に散りばめられたワードから、ハードな展開を本作に期待しているならば筋違いとなるので要注意だ。
上記の点を踏まえた上で往年のPCテキストアドベンチャーの雰囲気を味わいたいアドベンチャーゲームファンは元より、特定キャラ同士の百合的なシチュエーションを好む、いわゆるキャラゲー好きな方にも一見の価値ありな作品だ。価格もお手頃なので気になった方は是非。
「さあ、一日を変え、一生を変えるカクテルを!」
評価
個人的スコア(10点満点中) | 8.0 |
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良い点
- 90年代初期のPCアドベンチャーゲームを彷彿とさせるゲームデザインとGaroad musicが手掛けるFMサウンドを重視した上質な楽曲群
- 日毎の気分に合わせ、ジュークボックスで自由にBGMを登録して、プレイリスト再生することができる
- ジェンダーレスを始めとする現代的な社会問題を風刺した会話と、個性豊かなキャラクターが多数登場
惜しい点
- 下ネタとオタクサブカルチャー色が濃い作中のテキストはクセがかなり強く、一般受けするテイストとは言い難い部分も(※本作のCEROレーティングはD(17歳以上推奨)に分類)
- (※PlayStation Vita版)VitaTVでプレイする場合一連のタッチ操作をLRスティックで代替操作として行うため、シェイカー操作などの特定の操作がやり辛くなる
- 就業時間外と休憩時間を除くと、基本的に終始店内から出ずにカクテル作成、提供と客や従業員との会話だけで展開していく作品のため、店外へと舞台が変化するような要素は実質皆無
Neo Cab is a Trademark of Chance Agency LLC ※本作はテキストスタイルのアドベンチャーゲームです。 記述においての配慮を十分行ってはおりますが、ゲーム[…]