基本情報
新宿の狼
機種:プレイステーション2
発売:スパイク
開発:ワイズケイ
CERO:C(15歳以上推奨)
プレイ人数:1
発売日:2009年2月19日
価格:5,040円
ゲームジャンル:刑事アドベンチャー
メディア:CD-ROM
ゲームアーカイブス版:未発売
俺が法律だ!
犯罪蔓延る、眠らない街 ”新宿”
魔都と呼ばれるこの街に、ルールに縛られず己の生き方を貫く1匹の刑事がいた。
人は彼を”新宿の狼”と呼ぶ―
孤高の刑事”三上英二”となり、新宿管内にて起こる様々な事件を解決せよ。
闇ルートで流れた七丁の拳銃の行方を追う事件を経て、やがて辿り着く三上の過去に纏わる事件… その先にあるものとは―
自由度の高い箱庭タイプの刑事バイオレンスアクション。
プレイヤー自らが相手を裁く”俺法システム”で、犯罪者、通行人、みんなまとめて逮捕なんて俺様プレイも出来ちゃう!?
…ただし、俺法のご利用は計画的に。
一見は硬派な刑事もの。その中身は?
犯罪が蔓延る街―架空都市『新宿』を舞台に、馴れ合いを嫌う一匹狼の中年刑事、三上英二を操作し、七つの拳銃にまつわる事件を解決していくいわゆる箱庭タイプのアクションアドベンチャーゲーム。
「新宿の狼」とタイトルでこそガツンと硬派な雰囲気を匂わせながら、蓋を開けてみると、そのゲーム部分は中々カオスなテイストを放っている。
刑事レベルと格闘スタイルレベル、2種類の成長要素
以下ではゲームシステム部分について簡単に触れてみる。
まず操作キャラとなる三上には成長要素が備わっており、大きく分けて刑事レベル、格闘スタイルレベルの2タイプのレベル概念がある。
前者は事件解決や、犯人検挙、後者は同じ格闘スタイルを使い込むことでそれぞれレベルアップを図れるというもの。
基本的には刑事レベルを上げていくことで、街中を歩く通行人に対して犯罪歴のある悪人か、もしくは善人かを判別できるシステム “刑事の勘メーター”の精度が上昇。
また1レベルアップごとに5Pのボーナスポイントを獲得、これらは攻撃力、肺活量、移動速度などの各ステータスに振り分けることができる。
肺活量…? と中々他作品ではお目にかかりにくいこのパラメーターは、ダッシュ移動時に息切れを起こすまでの間隔が短くなるといったもの。
中年刑事が主人公なだけに、ということなのかもしれないがなんとも辛辣なパラメーターというか…妙なこだわりを感じられる。
一方格闘スタイルは基本の”狼スタイル”を含めて計4種類。
中には足技主体のキックボクシングスタイル、プロレステイストのクマスタイル等ユニークなものもあるが、自身の好みで選んでOK。
使い込めば使い込むほど、その格闘スタイルレベルが上がっていくのであれこれ齧るよりも1つか2つに絞って鍛えるのがいいだろう。
やりたい放題― 職権乱用”俺法システム”
そして本作がぶっ飛んでいる所以を最も象徴しているユニークなシステムが “俺が法律だ”、通称”俺法システム”の存在だ。
道行く通行人に警察手帳を見せた際、上述の”刑事の勘メーター”に反応して降伏状態になった通行人に対して発動可能。
罰金、豚箱、無罪の3つの何れかを選ぶことで対象の運命が決まるといったもので
罰金はランダムで一定額のお金を入手、要はカツアゲ
豚箱は問答無用で留置所送り
無罪は文字通り、といった効果にそれぞれ分かれている。
通行人に対してはほぼ誰にでもできるので、所持金を稼ぐ手段に乏しい本作においてこのシステムは主に罰金をメインに、活動資金の徴収に利用するのが一般的な使い方になり易い。
…正直やってる事は思いっきりアウトなのだが、そこはゲームということで。
ハメを外し過ぎればそれなりの報復が
ある程度自由度の高い本作ではあるが、あまり無差別に悪い方向に目立ったことをし過ぎるとその度に始末書ゲージが溜まっていく。
(始末書ゲージは職場に戻って始末書の処理をすることで軽減可能。)
この数値が100に達した時点でゲーム展開が一変、一面記事に三上の顔写真(目は隠してる)が大写しになった新聞のスクープデモ演出が挿入され、直後逃亡者モードに入り、全力で追いかけてくる警察から逃亡する、というスリリングな展開へと突入。
警察の追跡能力は逃げ続ける内に次第にエスカレートし、しまいには町中でミサイルクラスの重火器が飛び交う―
といったまるで怪獣映画規模の攻防戦へと発展するトンデモぶり。
この追跡を振り切るのは相当厳しいが、ゲーム内タイマーでどうにか48時間逃げ切ると、特別な称号がもらえる。
あくまでチャレンジ要素の一つだが、追われる側のスリルを味わいたくなったら、試してみるのも一興だ。
魔都”新宿”を喰らいつくす― 遊び要素も充実
当時の新宿をモデルに、街一つを可能な限り忠実に再現した本作の舞台、”新宿”ではバッティングセンター、パチスロ、雀荘での対人麻雀などの娯楽施設を始めとしたコンテンツもいくつか用意されている。
各種ショップ利用をすることでコスチュームの変更や、武器商人から愛用武器のカスタマイズ、大型の重火器を購入することもできるので所持金に余裕が出てきたらコレクションに走るのも一つの楽しみ方だ。
自由度が比較的高い本作では色々な遊び方が楽しめるが、その一例としては
通行人尋問→逮捕or俺法で弄くり倒してみたり、歩行中のチンピラに次々と喧嘩を売って暴力団壊滅を狙ってみたり、街中で無差別に拳銃やバズーカ等の武器を乱射してみたり、走行中のバイクや自動車を強引に停めて乗用車奪取&フリーランしてみたり、更には始末書超過で警官から逃亡劇ごっこの展開―
…
など、プレイヤーの工夫次第でカオスな魔都”新宿”の一丁上がり といった具合だ。
出血表現こそないものの、時にCERO:Cで出して大丈夫なのこれ? と問いたくなる部分も時にチラホラ。
これはあくまでフィクション― と笑い飛ばせる余裕あるプレイで楽しもう。
刑事ドラマ然とした硬派なストーリー
暴走気味のゲームシステムに反して、ストーリー本編については後輩刑事の米村を絡めての本格的なバディストーリーが楽しめる。
プロローグから始まり、ややノリがふざけ気味のチュートリアル(スキップ可能)を経て、七つの拳銃探しとなるストーリーシナリオ本編へ。
この拳銃探しのストーリーエンディングを迎えれば、三上の過去が絡んだもう1つのシナリオに展開、という二段構成となっている。
犯罪が蔓延る街に孤高に生きる『一匹』の刑事の生き方を物語の根幹としていることもあり、その展開も拳銃密売、暴力団や海外マフィア絡みのものなどバイオレンス、そして人間味に溢れるドラマが展開。
システムを初め、ゲームのB級な雰囲気が雰囲気だけにストーリーのインパクトは薄く見えがちだが、本編のところどころで見られる決め台詞「俺が法律だ!」を含め、三上が時折見せる漢気は一見の価値ありだ。
B級ならではの魅力
2009年産ゲームとしてはややグラフィックビジュアル面での見劣りこそするが、こういったタイプの国産アドベンチャーゲームではこれまでありそうでなかった刑事もの、その上でそこかしこにノスタルジックでB級な味わいが感じられる本作はそれだけにオンリーワン的な魅力もある。
往年の刑事ドラマ「らしさ」が詰まったゲーム作品自体稀少な為、この題材でアクションゲームをやってみたいといった層にはピンポイントで突き刺さることだろう。
(まあOPデモの曲からしてモロに〇陽にほ〇ろ!だし…)
雰囲気の点で言っても代わりとなるゲーム作品は中々ないので、少しでも気になったプレイステーション2ユーザーは是非お手元に。
おまけ:あの芸人が特別出演
2周目からはタイアップ企画として実在の某芸人が登場する、隠しシナリオが出現。
シナリオ自体は短いのでほんのチョイ役といった感じではあるが、新宿の狼の世界観に妙にハマっていて、最後までプレイした諸氏にはこちらも必見である。